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私達四人は、リンネ村と言う片田舎の小さな村で生まれた。
全員が同い年ということもあり、幼い時からいつも一緒だった。
遊ぶ時も、イタズラをする時も、それがバレて怒られる時もずっと一緒。
村はのどかで良いところだったけど、それが元気が有り余っていた私達には退屈に感じてしまう部分もあって、多くの若者がそうであるように私達も村の外での生活に憧れた。
「なあ!成人したらみんなで大きな街へ行って冒険者になろうぜ!
そんでさ、でっかいドラゴンとか倒して俺らも英雄になるんだ!」
かつての偉大な冒険者の活躍を題材にした物語が大好きだったジャッキスが憧れに顔を輝かせる。
「そうだね。きっと僕達なら出来る。そんな気がするよ」
ユアンが穏やかに微笑みながらそれに同意すれば、
「少し怖いけど、みんなとなら大丈夫な気がするわ」
期待に満ちた顔でエリザもそれに続く。
「そうだよね!だって私達最強だもんね!」
あの頃の希望に満ち溢れていた私も、自分達の成功を疑っていなかった。
それは単なる若者特有の自分は特別なんだというような思い込みによる勘違いではなく、そう思えるだけの根拠が私達にはあった。
ユアンとジャッキスは、それぞれ剣術と格闘術で早くから圧倒的な才能を見せて頭角を現していた。
エリザは貴重な光属性に特化していて、その治癒力は子どもの時から既に村の治癒魔法使いの力を遥かに凌駕していた。
私だって、普通は魔法の適正は一つか二つ。
多くても三つと言われている中で、地、水、火、風の四属性へ適正があり、将来は偉大な魔法使いになるだろうと言われていた。
つまり、私達四人は全員が神童と呼ばれるようなこどもだったんだ。
実際、三人は真の天才だった。
十五歳になって成人式を終えると、私達はすぐに村を出て一番近くの街で冒険者になった。
いつもみんなで朝早くから集まっていた、村の外れにある風が心地好い丘の上。
その場所をイメージしてパーティ名を『暁の風』として冒険者生活を始めると、みんなめきめきと頭角を現していった。
冒険者になって五年が過ぎた今、ユアンはその剣術の腕が認められ、国から最高の剣士に送られる「剣聖」の称号が授けられた。
ジャッキスも最強の格闘家と称えられ、「拳聖」の二つ名で呼ばれるようになった。
エリザはその類まれな治癒力が教会に認められ、数十年振りとなる「聖女」の称号が授けられた。
そうして冒険者パーティ『暁の風』が有名になるのと同時に、みんなは個人としてもどんどん名声を高めていった。
それなのに、そんな中で唯一私だけがいつまでも平凡な魔法しか使えないままだった。
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