2 夢の中

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2 夢の中

 さて、ここはどこでしょう? 地平線まで何もない草原だ。私の膝下くらいの緑の柔らかい草が、風もないのにそよそよと揺れている。 「ああ、来ちゃったの……」  突然後ろから声がして、振り返った。そこには今しがた話していた、ショウ様がいる。全裸で。  ん? なぜ全裸? こんなだだっ広い草原の真ん中で、それはそれは開放的でしょうけど……って、そうじゃない。 「ショウ様? ここはどこでしょう?」  あとなぜ貴方は全裸なのですか? そう聞きたいけれど、止めておいた。聞いてはいけないような気がします。 「……僕の夢の中」 「え?」 「僕が起きたら出られるから。それまで好きにしてたらいいよ」 「え、いや、しかし……」  戸惑う私をよそに、ショウ様は背を向けて歩き出してしまう。お待ちください、と追いかけ、その後ろ姿……正直に言いましょう、ショウ様の尻に釘付けになってしまった。  白く細い腰から、その、男性にしてはまあるくて、それでいてぷりっと上がっているショウ様の尻。ああ、あれを鷲掴みにして揉みしだきたい。  そんなことを考えてハッと気付く。私は今、とても破廉恥なことを考えてしまっていた。何よりショウ様は男で、私も男だ。あの小さな蕾に無理やりナニを突っ込みたいなどと、思ってはいけない。  だめです、と首を振って、どうもおかしいと気付いた。さっきから思考がすぐに色事へと流れていく。これはもしかして……。 「あの、ショウ様?」  私が呼び止めると、ショウ様は素直に振り返ってくださった。しかし、ショウ様の綺麗な桜色の胸の突起や、同じ色のショウ様のショウ様を見たら、自然と手が出そうになる。 「……ふん!」  私は右手を左手で掴んでそれを止めた。いや待て、本当におかしい、と私は体ごとショウ様を視界から外す。そしてショウ様のお母上は、それはそれは強い魔力を持つ、サキュバスだったことを思い出した。 「ああそうか。これは淫夢……」  原因が分かれば話は早い。しかしいくら淫夢とはいえ、これだけの魔力をもつショウ様と一緒にいると、自分がナニをするのか分からなくて怖くなる。 「……ん? ちょっと待ってください。ショウ様、魔力が……」  確か起きている時は、魔力が微塵も感じられなかったはずだ。なのにどうして今は、無意識に襲いそうなほど、淫魔としての魔力が高いのでしょう?  するとショウ様はボソリと呟くようにして、教えてくださった。 「僕の魔力は夢の中限定なの。……もう離れてよ」  あんたもみんなと同じように、俺を襲って快楽堕ちして使い物にならなくなりたいの? とショウ様は、どこか寂しげにおっしゃる。  次々と世話係が使い物にならなくなるって、そういうことですか。 「どの道こんな中途半端な魔力の僕なんて、誰も見向きもしないんだから……」  そう呟くショウ様。少し尖らせた赤みのある小さな唇……吸い付き……いやいやいや、落ち着け。  私は大きく息を吐いて、ショウ様に私のジャケットを脱いで肩に掛けた。驚いたように私を見るショウ様は、その大きな目で私の考えを一生懸命探ろうとしている。それが愛らしくて、私は微笑んだ。 「確かに、魔力が夢の中限定というのは驚きましたけど。ショウ様の魅力はもっと沢山ありますよ」  だからあまりご自分を卑下なさらないでください。そう言うと、ショウ様は少し頬を赤く染めて顔を逸らし、落ち着かないのか視線を泳がせた。 「……僕を襲わずに、そんなことまで言ったのはあんたが初めてだ」  名前は? と聞かれ、やはり自己紹介はスルーされていたんですね、と苦笑する。 「リュートです」 「リュート……」  ショウ様の愛らしい唇から私の名前が零れると、私は言いようのない快感に襲われた。そしてそれが一気に下半身に変化をもたらす。私は思わず少し前かがみになってしまった。ああ、これも魔力のせいですね。 「これからよろしく……リュート」 「は、はい……」  そしてショウ様は遠慮がちな笑顔を見せる。ああ可愛い、その大きな目を快感で歪ませたい。  ショウ様の魔力のせいで思考がピンク色になってしまいましたが、当の本人は自覚がないのか普通です。そして、またあの綺麗な尻を見せて歩き出してしまう。  かくして、ショウ様の無自覚魔力(強力)と、私の忍耐力の戦いが始まったのだった。
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