洋子の結婚式

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正面に、大きな十字架があって、その前に神父さんと加納さんが、花嫁を迎えるために立っていた。のぞみの近くの扉が開いて、白いウエディングドレスを着た美しい花嫁姿の洋子とタキシード姿の洋子のお父さんが現れた。 美しいウエディングドレスの裾を優雅に引きずって、バージンロードを歩く娘を庇うように寄り添う、お父さんの姿にのぞみは感動した。 (洋子は温かい家庭で、幸せに育ったんだね!) 羨ましそうに見つめているのぞみに気付いたのか、美しいベールの中から花嫁が笑いかけて来た。嬉しさに小さく手を振ると、洋子も振り返してきた。 のぞみは幸せで胸いっぱいになって、静々と加納さんの傍に行く洋子の後ろ姿に見とれていた。結婚式は荘厳で神聖なまま厳かに終わった。 「そろそろ、行きましょうか」 「はい」 小西に言われて、のぞみは席を立ちながら、木野の方に視線を移した。木野は「うん」と頷くと優しく笑いながら言った。 「次は披露宴ですね。その前に少し外の空気に当りに行きませんか?」 「結婚式に行く度に思うんだけど、なんか緊張して疲れるよね。缶コーヒーを買って来るから、二人で先に行っといて」 小西が足早に出て行くのを見て、木野が声を掛けた。 「おれ、お茶の方が良いから」 そう言いながら、木野がのぞみに尋ねる様に目を向けたので、同意するように頷いた。 「彼女もお茶が良いって…」 「分かった。俺もそうするよ!」 聞くなり、小西は走り出した。 「外のベンチにいるから…」 木野が声を掛けると、振り向かずに手だけ「分かった」という様に挙げ、ホテル前の広い道路を渡って、コンビニに入って行った。 「高級喫茶も良いけれど、俺達はこっち向きかな」 と言いながら、小西は冷たいペットボトルのお茶を木野とのぞみに渡して、先にグイグイ飲んだ。 「うまい、もう一本」 と言いながら、小西は2本目のボトルのキャップを開けて飲み始めた。 「大丈夫か? そんなに飲んだら、今から披露宴なのに上手い料理が食えなくなるぞ」 「変に喉ばっかり乾いてさ、緊張してるのかな」 「まっ、飲むだけ飲んで落ち着いたら、行こうか」 「うん。お前スピーチ頼まれてるんだろ。いろいろ心の準備もあるだろうから、ぼちぼち行こうか」 披露宴の会場に付くと、6割ぐらいの人がテーブルについていたが、3人が席に着くころには、全席埋まっていた。
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