洋子の結婚式

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嬉しい事に、のぞみ達のテーブルには3人分の料理が用意されていた。 「あっ、俺達のテーブル3人になってる。ホテルの人が気を利かせてくれたんだ!」 小西が嬉しそうに、素っ頓狂な声を出して言った。 「良かったね、秋山さん。これで他の人に気を使わずにすむね」 のぞみに椅子を勧めながら、木野が言った。 「有り難うございます。ほんとに嬉しいです」 「秋山さん、気ばかり使って、体がカチンコチンになってるんじゃないの」 先に座っている小西も笑いながら言った。 「良かったよな、木野、3人だとゆっくり坐れてさ」 「ほんと、ラッキーだったね。何でも言ってみるもんだね」 木野が笑いながら二人を見て、最後に座った。 (良かった! 良い人と一緒にいる事が出来て…) のぞみが、ほっとしてゆっくり洋子の方を見た。 華やかな会場の中で、正面に座る洋子と加納さんの姿が眩しい。 先程の白いウエディングドレスから、淡いピンクのドレスに着替えた洋子が白と紫の花のブーケを持ち、髪にも同じ花を飾って頬笑みを浮かべながら、時々加納さんに話かけている姿が初々しい。 (洋子ちゃん、幸せそう!) のぞみが羨ましそうに、新郎新婦の姿を見つめていると、司会者の声が耳に入ってきた。 「では、御新郎様の御友人木野様からの祝福の言葉を~」 ゆっくりと式は進行して、木野がスピーチする番になった。 「それじゃ、行って来るよ」 司会者に指名されて、木野はマイクの前に立って話し出した。 「友人代表でスピーチをする等という大役を仰せつかって、無事果たせるか心配しています」 と言う、言葉で始まって、 「いつもは鬼の様に怖い室長も好きな人の前ではこんなに幸せそうな顔をして笑うんだと今、初めて知った次第です」 と、みんなを笑わせた後、 「一人の友人として、末長くお二人の幸せを願って、お祝いの言葉とさせて頂きます」 と言って、木野のスピーチは終わった。 少し緊張した顔で、テーブルに戻ってきた木野を、小西とのぞみは拍手で迎えた。 「いやー、緊張したよ」 木野は笑いながら二人を見て、ネクタイをキュッキュと緩めながら椅子に腰かけた。 「良いスピーチだったよ!」 と小西が言えば、のぞみも「うんうん」と頷きながら、 「素敵でした!」 と、言葉を添えた。
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