洋子から見た二人

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洋子から見た二人

あの合コンの日から会社のお昼休みに、三人が集まるといつも木野と加納の話になった。 洋子は加納の事を麻耶は木野の事を話すのが普通になっていた。 麻耶が木野の話をしている時、のぞみの瞳が輝いている事を洋子は知っていた。 (のぞみは木野さんの事が好きなのに、麻耶に遠慮してるのね。可哀想に) と思っていた。 でも、麻耶は木野さんに夢中だったし、木野さんも麻耶に誠実に接しているように感じた。 内気なのぞみが心配だったが、洋子にはどうすることもできなかった。 ところが、しばらくして転機が訪れた。麻耶が木野さんと別れようと思っているというのだ。洋子はかなり意外だった。加納はいつも木野を褒めていたし、麻耶の話を聞いても木野さんに問題があるとは思えなかった。 麻耶だって大切な友達だからこの出会いを大切にしてほしいと思っていたので、もう少し考えるように話してみたが、麻耶の決意は固いようだった。 早く結婚したい麻耶には、荷が重い相手だったかもしれなかった。洋子だって、加納と6年越しの結婚だ。もっと落ち着いて考えればいいのにと洋子は思った。でも、麻耶がそう決めたのなら、次はのぞみが行動を起こす時だ。とはいえ、奥手ののぞみに言ったところで通じるか… …のぞみが結婚式の招待に応じくれたので、洋子もそれに応えることに決めた。 (一言、のぞみの気持ちを木野さんに伝えるだけで良い) そう思って、結婚式のこの日、心を込めてのぞみの気持ちを木野に伝える事にしたのだ。 のぞみは思いがけない洋子の姿に、体が固まって動けずにいた。 (ごめんなさい、木野さん。洋子ちゃんは私の為に必死なんです。でも忘れて下さい。あなたと私では、何一つ釣り合うものが無いのですから) 「洋子ちゃん、そんな事言ったら木野さんが困るでしょう。それに綺麗なドレスが汚れるわ」 のぞみは洋子を立たせながら、恥ずかしさで木野の顔を見る事が出来なかった。耳まで真っ赤にして、甲斐甲斐しくドレスの裾を調えるのぞみの姿がいじらしかった。
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