洋子から見た二人

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洋子達を新婚旅行に送り出す為にみんなは、ホテルの入り口でワイワイ言いながら、待っていた。のぞみも幸せな洋子の顔を見たくて、木野と小西の後に付いて行った。 途中で、二人が振り返ってのぞみを間に入れてくれた。厚かましいと思ったけれど、誰も知り合いが無く心細い気持でいたのぞみを、何時も気遣ってくれる二人の優しさにいつしか甘えていたのだった。 (木野さんて、ほんとに優しい人。どうして 麻耶はこんな素敵な人と、別れるなんて言うのかしら) その謎が、のぞみにはどうしても分からなかった。 (でも、私は木野さんが好き。こんな素敵な人、他に居ない。今この時だけでも木野さんの姿を目に焼き付けて置きたいな) 「ホテルの入り口で待ってたらいいのかな?」 木野が聞くと、小西が言った。 「まさか、役者でも無いのに、裏口からこそこそと新婚旅行に行く事は無いだろう」 のぞみは、小西の言い方が可笑しくて、思わず笑ってしまった。 「どうしたの? 秋山さん」 「お前が、可笑しな事を言うからだよ」 と、言って木野が助け船を出してくれた。 「何でだよ?」 「室長達が裏口から、こそこそ出て行くんじゃないかなんて…ね」 木野が、のぞみの話を振ってきたから、のぞみは思わず、 「はい!」と元気良く答えた。 「ほら!」 木野が小西を見て可笑しそうに笑うと、のぞみにも相づちを打つように笑いかけてくれた。 (私、幸せ! こうして木野さんといられる事が…) のぞみは、手の届かない人に思いを寄せてしまった自分に反省しながらも、もし、叶うなら木野さんのお嫁さんになりたいと願う、小さな思いを胸の中に閉じ込めた。 「ほら、木野。他の奴らも来てるじゃないか! 入り口で良かったんじゃないか」 小西が嬉しそうな声を張り上げると、木野が笑いながら言った。 「ほんとだよ! お前のお陰でうっかりしてたら、裏口で待つ所だったよ」 「こいつ~」 小西はそう言いながら、木野の首をはがいじめにした。 (良いな! 男の人って、いつまでも子どもみたいで) 男兄弟の無いのぞみは、羨ましいなと思いながら、木野達を見ていた。 (女同士って、長い間付き合っていても、どこか遠慮した所があって… 木野さんや小西さんの様に心の中にグイグイ入って行く事が出来ないもの。羨ましいな) のぞみがそんな事を考えている間に、3人は洋子達を送り出そうと集まっているみんなの中に、いつの間にか入っていた。
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