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「私も行きたかったけど、お金が無いから」
「……」
「部屋代とかローンの支払いを考えると、ちょっと無理かなっと思って」
のぞみは何も言えなかった。
のぞみだって母がお金のやりくりをして、いつも仲良くして貰ってる洋子ちゃんの結婚式だからと来させてくれたのを知っているから…
「会社の人、誰か来てた?」
「ううん。誰も来てなかった」
「やっぱりね。洋子が会社に籍を置いて、式を挙げたんだったら、課長ぐらいは行ったんだろうけど、先に辞めたからね。仕方無いかも」
(そんなものなんだ…)
と、のぞみはむなしい気持ちになった。
自分とは違い洋子は人気があった。明るくて綺麗だし、世話好きで誰にも好かれている感じだった。なのに会社の人が誰も来なかったなんて、本当に以外だったのだ。
「一人ぼっちで、淋しくなかった?」
「うん。洋子ちゃんのお母さんが一緒にいてくれたから」
麻耶には悪いと思ったけれど、のぞみは嘘を付いてしまった。
「ごめんね。のぞみ」
「ううん」
「それで、のぞみは御祝儀いくら包んだの?」
「10万円……」
「やっぱり、あそこのホテルで結婚式を挙げるんだもの、その位は、いるよね」
「……」
のぞみは、どう返事をしたらいいのか、分からなくて黙っていた。
「木野さん、来てた?」
「え? うん」
(どうして、知らないの?)
思わずで口にしそうな言葉をぐっと飲みこんだ。
そして、木野さんの話題になったらどうしよと、内心すごく焦った。
「そりゃ、そうよね。直属の上司の結婚式だもの、当り前よね」
(木野さんが来てるか……なんて、私に聞くってことは、本当にお別れしたのかな……)
のぞみの心配をよそに、麻耶は独り言のように話し始めた。のぞみはただそれを聞いているだけだった。
麻耶は結婚式に行かなかった事を、相当、悔んでいる様だった。
「洋子とは、一番、親しかったのに悪いなって思って、ちょっと、落ち込んでるの、のぞみは偉いね。日頃、夜遊びなんてしないから、お金貯まるよね」
「そんな事ないよ」
「私、ちゃんとお金貯めとけば良かったな。そしたら今日、のぞみと一緒に洋子の結婚式行けたのにね」
淋しく笑う麻耶に、心を痛めながらも何も言う事が出来なかった。
「のぞみ、ちょっと喫茶店に入って、何か飲もうよ! なんか疲れちゃった」
「麻耶ちゃん」
「うん?」
「結婚式が終わって、私が帰って来るのをずっとここで待っててくれたの?」
「そんな事ないよ。これくらいの時間かなって、当たりを付けてたから」
「本当に?」
「うん。それより喫茶店に行って、洋子の話聞かせてよ」
「うん」
麻耶に同調して、すぐに喫茶店に行った。
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