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洋子の白いウエディングドレスが美しく、その後、お色直しで着た淡いピンクのドレスがとても可愛かった等、そして文金高島田の姿が美しくて、見惚れてしまった事など、結婚式の事を事細かく麻耶に伝えた。
しかし、友人代表でスピーチをした事や、木野と一緒に行動していた事は言えなかった。
「お料理、おいしかった?」
「うん。でも初めて食べるものばかりだし、フォークとナイフの扱いが大変で」
「緊張してるしね!」
「うん、なんか変な事したら駄目だと思って、汗ダクダクだったわ」
それは本当だった。慣れない場所で緊張のあまり、変な汗が出てきてハンカチで顔ばっかり拭いていたのを思い出して言った。
「分かるわ、私が傍にいなかったから、のぞみ、大変だったでしょう」
「今さらながら、感じたわ。麻耶と洋子ちゃんの有難さを…」
「今度は私もしっかりお金を貯めとくからね。もう、のぞみをこんな目に合わさないからね」
「麻耶ちゃん、そんなに心配しないで、私、大丈夫だったから」
「私も分かっていたのにね。洋子の派手な性格の事。持っているものといえば、ブランドもんばっかりで、とうとう、旦那までブランド品で決めちゃったもんね」
「え?」
麻耶の意外な言葉に、びっくりした。
「ある意味、偉いと思うよ」
(私達、仲良しだったんじゃなかったの? 目出たい洋子の結婚式の日にそんな事を言うのはやめて)
のぞみは、声を出してそう言いたかったが、喉の奥に引っ掛かって言葉が出て来なかった。
「それにしても結婚式の費用、高かったやろね」
麻耶は、ホテルの名前の入った豪華な紙袋を見ながら、のぞみに言った。
「後で、苦労するんじゃないかな? ほら、結婚式をローンにしてたりとか、してたら」
「?」
「そうでしょう。結婚式のローンに家のローンその上、車までローンだったらって事よ」
のぞみはだんだん麻耶と話すのが億劫になってきた。
(どうしてなの? いつもの麻耶じゃないみたい)
「麻耶ちゃんと話してたら、結婚の夢が壊れてしまいそう」
のぞみはやっと、それだけ言った。
「でも、それくらい考えとかないと、結婚したとたん、借金地獄になっちゃうかもよ」
「洋子ちゃんだって、しっかり考えていると思うよ。家にいて欲しいと加納さんに言われて、会社辞めちゃったけど、本当は家のローンの為に働くと言ってたじゃない」
「そうだったね」
「うん」
それから、暫くして麻耶と別れたけれど、後味の悪さだけが心に残った。
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