第1章 〔ひさご〕での日々

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「のんちゃん、ご飯食べよ。くうちゃん起きると良いんだけど」 そう言いながら、お母さんは鍋焼きうどんを作ってくれた。 「疲れた時はこれが1番よ。ツルツルとのど越しが良いから食べやすいのよ。唐揚げも冷や奴も残ってるから食べよう。くうちゃん。ご飯ですよ」 お母さんがすやすや眠っている胡桃を、優しくあやす様に起こしている。 「ええ子やねえ、くうちゃんは、忙しい時ずっと、寝ててくれてたもんね」 「はい。助かりました。お客さまが次々に来て下さったから、胡桃が起きて泣いたらどうしようかと、半分ビクビクしていましたから、本当に寝ていてくれて助かりました」 「きっと疲れたんやね。確かハンバーグ食べたいって言ってたよね」 「はい!」 「この近くにハンバーグの美味しい店があるのよ。そこへ行こうか」 「でも…」 「でももクソもないわ。うちは11時で締めるけど、ここらはまだまだ、遅くまでやってるとこの方が多いから、大丈夫よ」 「くうちゃん。起っきしましょ」 のぞみが、小さな体を優しく揺すると、ふあふあした顔で目を開けた。
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