お母ちゃんとケーキ

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お母ちゃんとケーキ

(早く帰って、お母ちゃんとケーキでも食べながら、楽しい話をしょう) のぞみは急ぎ足になって家に帰った。 「お帰り、のぞみ。結婚式どうだった?」 「あんまり豪華でびっくりしちゃった!」 「まあ、良い所のホテルでするだけあるわね。見て! このケーキのおいしそうな事」 「ほんとだ!」 「食べるの勿体ないよね」 母と話していると、さっき、麻耶と話していた時の嫌な思いが、どこかに消えて行く感じがした。 「まあ! 今度は時計が出て来たわ。のぞみも早くここに来て一緒に見ましょうよ!」 楽しそうにはしゃぐ母の声に誘われて、着替えるのもそこそこに母の所に行った。 「まあ! 可愛い! 天使が二人で何か話してるわよ!」 母は、透明なガラスに天使を彫った置時計を持って、のぞみに見せた。 「何か、うちの家には勿体ない気がするわね。どこかこの時計の似会う置き場所を探さないと」 母は大事そうに時計を持って、キョロキョロと家の中を見回した。 「この引き出物を見ていると、洋子ちゃん達は幸せなんだなって…」 今度はしんみりと、置時計を撫ぜながら言った。 「ねえ、のぞみ。式場では、ずっと麻耶ちゃんと一緒だったの!」 「ううん。麻耶、結婚式に来なかったのよ」 「え? どうして?」 「一人暮らしで生活が大変だからって、御祝儀の事で」 「そう…」 その言葉を聞いて、母はそれ以上、麻耶の事を言わなくなった。 「じゃあ、のぞみは式場で、ずっと一人だったの?」 母は心配そうに、のぞみを見て言った。 「ううん。ほら、うんと前に話した事あるでしょう」 「?」 「洋子の御主人になる加納さんの部下で、素敵な人がいるって言った事」 「うん。聞いた!聞いた! 合コンの時の人でしょう!」 「そう、その人と一緒にいさせて貰ったの!」 のぞみの言葉に、母は驚きながらも興味ありげに話の続きを聞きたそうにした。 それよりも、のぞみが過去にちょっと言った、木野の事を母が覚えていたのにはびっくりしたのだった。 「確か~、お名前は?」 「木野さんよ!、洋子ちゃんの旦那さんが、室長さんでその次に偉い人なんだって」 「へえ~ そんなこと誰に聞いたの?」 「木野さんと同じ部署の小西さんという男の人から」 「じゃ、のぞみは木野さんと小西さんと一緒におらして貰ったんだ」 「うん、木野さんね、友人代表でスピーチしたんよ。爽やかな口調でとても上手だった」 「へえ~」 母は興味深そうな顔をしてのぞみを見つめた。のぞみも少し頬を染めて嬉しそうに話した。
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