お母ちゃんとケーキ

4/4
前へ
/187ページ
次へ
のぞみはほっとしながら、麻耶の職場に目を向けた。だけど姿が無い。 (どうしちゃったんだろう? 麻耶) のぞみは心配で、居ても経っても居られなくなって、こっそり、スマホを出して麻耶にメールを送った。 だけど、返事は返って来なかった。 お昼休みにもう一度、メールをした。やっぱり返って来ない。心配でその後、何度もメールを送ったが、やっぱり返って来なかった。 のぞみは暗い気持ちのままパソコンを開いて、仕事に集中した。 それから、1週間もしない間に、麻耶が退社したと聞いた。 朝早くに来て、人事課の人に退職願いを出すと、そのまま誰にも挨拶せずに帰って行ったそうだ。 (どうして? 麻耶) のぞみは淋しかった。どんな事情があるにせよ、会社を辞めるなら辞めるで自分だけには話して欲しかった。 麻耶がどうして、こんな辞め方するのか、のぞみには想像が付かなかった。 (いったい、どうして?) 洋子の結婚式の日から、のぞみの回りがなんとなく変わって来ている様な気がするのは、思い過ごしなのかも知れないけれど… 会社でも職場でも、女子社員の話といえば結婚の事ばかり、焦りとも諦めともつかない話題が多くて、みんなの中になかなか入って行けない。 特に麻耶のいなくなった会社は、殺風景な感じでのぞみも新しい友達を作る事が出来なかった。 洋子がいて、麻耶がいたあの頃が懐かしくて、時々会社を辞めたくなる時がある。 一応、家の経済を支えているのぞみには、自分のお給料を当てにしている母の期待を裏切る訳にはいかない。だから、辞めて新しい会社で働くなんて選択肢は無かったのだが。 (友達って良いな!) お昼御飯を一人で食べている時なんかは、特に洋子や麻耶を思い出して泣けてくる。 友達のいない生活に少しは慣れて来たつもりだったが、淋しい気持ちというのは不思議なもので洋子達と一緒にいた頃よりも、意外と仕事に身が入らない。空虚な思いの方が勝っていて、頭の中が中々まとまらない。 そんな感じで面白くないせいか、会社にいる時間が長く感じるのだった。
/187ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加