新しい人が来た

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新しい人が来た

それから暫くして、のぞみの課に洗練された様に美しい女の人が配属されてきた。 その人は千葉瞳という名で、洋子や麻耶とは違う美しさがあった。 (綺麗な人だなあ!) 彼女のハキハキと話す明るい性格は、職場の人達にすぐに気に入られた。 のぞみが、千葉瞳の新人教育の担当になったが、パソコンにも精通していて、経理の仕事を覚えるのも早かった。前歴が女の子に人気のブランド洋服店の販売員だったそうでテキパキ動く姿は美しくさえ見えた。 見た目は冷たそうな感じなのに、話すと人懐っこくて可愛い感じのする人だった。 「ねえ、今日から、先輩の事、のんちゃんって呼んでも良いですか?」 入社して、3日目のお昼ご飯の時に、千葉瞳の方からそう言って来た。 「良いわよ! どうして?」 「先輩って呼ぶ度に男の人に呼んでる感じになって、それに、先輩と私は同じ年でしょ。その上私の方が、5ヶ月も上なんだもの。私もみんなみたいにのんちゃんって呼びたいなと思って」 千葉瞳は、もじもじしたり、急に声を高くして言った。 (え? 私より若く見えるのに、5ヶ月も上なんだ。へえ~知らなかったなあ!) のぞみは少し驚きながらも、平静を装って言った。 「その方が嬉しいな! じゃあ、私も瞳ちゃんって呼んで良い?」 「わあ、嬉しい!」 そんな感じでのぞみ達は職場の先輩後輩から、すぐに友達の関係になったのだった。 「良い所で働いてたのにどうして辞めたの、勿体ないよ」 と、古株の男子社員に言われた時の、瞳の返事がユニークだった。 「モラハラとセクハラがダブルで私を襲ってきたからです。特に色んな男の人から声を掛けられて、困ったなあと思ったので、思い切って辞めたのです」 男子社員は、瞳の言葉を聞いて、笑いながら離れて行った。
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