新しい人が来た

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「本当? 瞳ちゃん」 「あっ、のんちゃんが瞳ちゃんって言ってくれた。嬉しい!」 瞳はのぞみの手を掴むと思い切り振って、ピョンピョン飛んで笑いながら言った。 「さっきの男の人に言った返事の事?」 「うん」 「そんな事ある筈無いじゃない!」 瞳は笑いながら、のぞみの言葉を否定して言った。 「あの男の人ね。伊達さんと言って、営業一課の人で女子社員にとっても人気のある人なのよ!」 「へえ?」 「伊達さんが、瞳ちゃんに声をかけて来るなんてびっくりしちゃった!」 「そうなの! それは勿体ない事をしたかも…」 のぞみが笑って言うと、瞳が意味ありげに体を寄せて来て言った。 「ひょっとして、のんちゃんの意中の人?」 「違う、違う、滅多に女の子に話かけて来ないので有名な人なのに、瞳ちゃんに声をかけて来たから、伊達さんにしては珍しいなと思って」 「ふ~ん、そうなんだ」 瞳は興味が無いと言う様な返事をして、心配そうに見ているのぞみに笑いながら言った。 「ほんとはノルマがきつくて、辞めたのよ。別に店側は売ってくれと言う訳じゃないんだけど、私自身がね、なにも売る事が出来ないのにお給料貰うのがしんどくて」 「そうだったの」 「良い人ばっかりだったけど、これは無理と思って辞める事にしたの」 のぞみは、瞳の潔さに感心して聞いた。 「ブランド店って、お給料高いんでしょう?」 「みんなそう言うけど、どうなのかしら。それに若い子の服を売ってたから、歳いったら働きにくいでしょう。事務職だったら定年までのんびりいけるんじゃないかなと思って、パソコン検定3級を取って、働きながら仕事を探していたの」 「へえ、瞳ちゃんは頑張り屋さんね」 「のんちゃんは、資格持ってるの?」 「パソコン準1級かな」 「へえ、凄い!凄い!」 「瞳ちゃんも、ここで働きながら色んな資格を取っていったらいいのよ」 「じゃ、のんちゃんもここで働きながら、取ったの」 「そうよ。簿記とか給与計算検定とか」 「じゃ、私も頑張る!」 「そうよ!」 のぞみは瞳と話してるのが楽しかった。同じ年という気楽さもあってか、いっぱい話したくなってくるのだった。
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