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「くうちゃん。くうちゃんの大好きなハンバーグを食べに行こう」
「本当! ママ」
「もちろんよ!」
胡桃は急に大きな目を開けて、のぞみにしがみ付いて来た。そして辺りをキョロキョロ見ながら不思議そうな顔をして言った。
「ママ?」
「ママね。働かせて貰える事になったの」
「くうちゃん、さっき来てくれた時、酷い事言ってごめんね」
「?」
胡桃は、お母さんの言ってる意味が分からないのか、目をパチクリさせて「はい」と言った。お母さんは、まだ眠たそうな目の胡桃をしっかり抱きよせて、キュッと力を込めた。
「くうちゃん。これからは、私の事をおばあちゃんと呼んでね」
「はい」
胡桃は、はっきりとした声でしっかり返事した。
母子はどんな運命を背負って、この【ひさご】に来たのか、それはまだ分からないけれど、人に言われぬ辛い思いを背負ってるのだけは確かだと、感じるお母さんだった。
「くうちゃん。試しに一度、おばあちゃんと呼んでみて!」
お母さんが、胡桃の小さな手を掴んで、笑いかけながら言った。
「おばあちゃん!」
胡桃は、「おばあちゃん」と呼びながら、女将さんに抱きついた。
「ありがとう! ありがとうね!」
お母さんは、胡桃を抱き締めて、何度も何度も頬摺りして言った。
「くうちゃん。お腹すいたでしょう? ハンバーグ食べに行こうか!」
「くうちゃんね。おねんねしたいです」
胡桃は相当眠いのか、重そうな瞼を見開いてお母さんに言ったかと思うと、すぐにすやすやと眠ってしまった。
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