第1章 〔ひさご〕での日々

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「くうちゃん。くうちゃんの大好きなハンバーグを食べに行こう」 「本当! ママ」 「もちろんよ!」 胡桃は急に大きな目を開けて、のぞみにしがみ付いて来た。そして辺りをキョロキョロ見ながら不思議そうな顔をして言った。 「ママ?」 「ママね。働かせて貰える事になったの」 「くうちゃん、さっき来てくれた時、酷い事言ってごめんね」 「?」 胡桃は、お母さんの言ってる意味が分からないのか、目をパチクリさせて「はい」と言った。お母さんは、まだ眠たそうな目の胡桃をしっかり抱きよせて、キュッと力を込めた。 「くうちゃん。これからは、私の事をおばあちゃんと呼んでね」 「はい」 胡桃は、はっきりとした声でしっかり返事した。 母子はどんな運命を背負って、この【ひさご】に来たのか、それはまだ分からないけれど、人に言われぬ辛い思いを背負ってるのだけは確かだと、感じるお母さんだった。 「くうちゃん。試しに一度、おばあちゃんと呼んでみて!」 お母さんが、胡桃の小さな手を掴んで、笑いかけながら言った。 「おばあちゃん!」 胡桃は、「おばあちゃん」と呼びながら、女将さんに抱きついた。 「ありがとう! ありがとうね!」 お母さんは、胡桃を抱き締めて、何度も何度も頬摺りして言った。 「くうちゃん。お腹すいたでしょう? ハンバーグ食べに行こうか!」 「くうちゃんね。おねんねしたいです」 胡桃は相当眠いのか、重そうな瞼を見開いてお母さんに言ったかと思うと、すぐにすやすやと眠ってしまった。
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