幸せの始まり

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「久し振りだね。元気だった!」 「はい!」 (とっても元気で、木野さんの姿ばかり捜していましたとも言えないもの) 「あれから、どうしているのかなと思ってたんだよ」 (え! 木野さんも…私の事を) のぞみは信じられないぐらい嬉しくて、幸せで胸が張り裂けそうになった。 「本当ですか! 嬉しい!」 (バカバカ、のぞみの馬鹿、こう言う時は私もですって、落ち着いて言わなくっちゃいけないのに) 「レストランの人が案内して下さったので、先に座っててごめんなさいね」 母は窓際の席に座って、メニューを開きながらニコニコして言った。 「お母ちゃんは、何にするか決まった?」 (わあ~駄目、また、お母ちゃんと言っちゃった) のぞみは、恥ずかしさで顔の火照りを覚ます様に掌をそっと、頬に当てた。 「今、考えているところ! のぞみは?」 「う~ん、何にしようかな? 木野さんは?」 のぞみは向かい側に座った木野にメニューを聞いた。 「沢山あって迷うね! 君は?」 「う~ん。お母ちゃんは?」 「お母ちゃんわね、グラタンにしょうかな、これよこれ! 小さな海老が入っていておいしいのよ! のぞみは」 「私はハンバーグ、ご飯とスープを付けて」 のぞみが嬉しそうにメニューを閉じながら言った。 「じゃ、僕も同じで…」 木野がのぞみを見て、頷きながら言った。 「この子はハンバーグが好きで、どこのお店に入ってもハンバーグを注文するんですよ」 「そうですか! 僕も好きです」 「まあ、良かった! それなら私もハンバーグにすれば良かったわ」 母は何時もよりはしゃいで、木野を眩しそうに見つめていた。 近所のスーパーで偶然会った日から、急に親しくなった木野とのぞみは、時々誘いあっては中之島公園を歩いたり、梅田に出て喫茶店で珈琲を飲んだり、安くて大盛りのラーメンやさんがあると聞けば食べに行ったりの楽しいデートを重ねていた。 のぞみは少し年上の木野の事を、好きな人とか恋人という以上に、お兄さんの様な受身の温かさに心の安らぎを感じていた。 もしのぞみが何か願い事をしたら、どんな事でも叶えてくれそうな感じがするそんな木野の包み込む様な優しさが大好きだった。
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