幸せの始まり

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「じゃ、大阪港に行って、船でも見に行く?」 「はい!」 のぞみはつられて返事をしたけれど、本当は浜辺のある海に行きたかった。 白い砂浜に青い海、そんな所で大好きな人と手を繋いで歩いたり、いろんな話ができたらなとちょっと希望を抱いてしまったのだが、 「それじゃ、次の日曜日、朝9時に河内長野駅で待ち合わそう」 「はい!」 でも、木野と一緒にいられるだけで嬉しいのぞみは、つい幸せそうに返事をしてしまう。 (木野さんと結婚できたら幸せになれるだろうな……優しいし、......とても楽しいけど、話していて、住む世界が違うなと思うのものも確か...... 木野さんから、一度も結婚の話が出たことはないから、もしかしたら、私との結婚は考えてないのかも……それでも良い、あんなに素敵な人とお付き合いできるなんて思ってもいなかったから、それだけで幸せ...... 結婚したいと思う人としかお付き合いしないなんて思ってたのに……不思議だよね) 夢と現実の違いに、のぞみは小さくため息をついた。 (今なら麻耶の気持ちをわかる気がする。なにかしら確かな言葉が欲しいよね。私にはもったいない人だと分かってても、やっぱりどこかで望んじゃうよね。......でも、聞くのは、すごく怖い。……麻耶、わたし、麻耶の気持ち全然分かってなかったんだね。) (それに、もしも結婚......なんて話になっても、お母ちゃんを置いて出ていくなんてできない......。お母ちゃん、ひとりぼっちになっちゃう。木野さんはお母ちゃんもすごく大事にしてくれるけど、一緒に住むのとは話が違うよね) (今、この時を大事にして、大好きな人の声や仕草を心に止めて置くのよ……) 普通の女の子なら、そんな考えは悲しいと思うかも知れないけれど、母の苦労をずっと見て来たのぞみには自然な思いだった。
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