母の意外な行動

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「夢だったら、どうしょうと思って確かめて見たんです」 顔を真っ赤にして、嬉しそうに頬を撫ぜながら言うのぞみを見た木野は、可愛さのあまり人目も憚らず抱き寄せてしまった のぞみは、信じられない幸せに、これからの未来を、温かな木野の胸の中で思い描いていた。 「嬉しくて、涙が止まりません」 のぞみはそっと、涙を手で拭いながら幸せそうに笑って言った。 (私、木野さんの心の支えになれるような人になりたい!) のぞみは木野の生い立ちを聞いて、前よりうんと心が近くなった様な気がして、そっとその腕を取って寄り添った。 (いつも温かな感じで接してくれる木野さんが、天涯孤独だったなんて、一人ぼっちで生きて来たという事でしょう) そんな悲しい過去を背負っていたと思うと、のぞみは自分の全てを木野に捧げて生きていきたいと思ったのだった。 「私は木野さんより、少しだけ幸せだったかも知れません。母がいたから。父が死んでから親戚の人達は遠のいてしまって、今ではお付き合いなんて全くありません。だから、洋子ちゃん達の結婚式みたいに親戚の人が沢山来てくれる事なんてないです」 心に思っていたわだかまりの様なものが、扉が開いた様に口からスイスイ出て来る。 言いにくかった家庭の事情が、木野に分かってもらえた様でのぞみの心は大分軽くなったのだ。 「お母さんもそんな事を仰ってたよ。だから、僕も言いにくい事も言えたし良かったと思ってる」 「私、木野さんの事が初めて会った時から大好きでした。だから麻耶と木野さんがお付き合いする事になった時悲しかったです」 「僕も、あの居酒屋で会った時、こう言う場所に似合わない子だなあって」 (私の事、気に止めてくれていたんだ) のぞみは嬉しくて、心の中がポッと熱くなるのを感じた。
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