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「そうそう、のんちゃんがうちに来てくれると思ってなかったから、お布団ないのよ。今日は私の布団で3人で寝る事にして、明日、大丸に買いに行こう」
「有り難うございます」
「じゃ、お風呂に入って寝ようか」
「はい」
お風呂は大きくて広々としていた。まるで高級旅館の様な豪華な檜造りの風呂だった。
「のんちゃん、一緒に入ろう」
「はい」
と、返事をしたものの、今日出会ったばかりのお母さんと一緒にお風呂に入るというのは、いくら女どうしと言っても結構勇気のいる事だった。
でも、お風呂に入ってすぐに思った。ポンポンと歯切れよく話すお母さんだけど、眠いからなのか、足元がフラフラしていて、慌てて介添えしたくらいだった。
その時、胡桃の泣き声が聞こえてきて、のぞみは急いでバスタオルを体に巻き付けると走って行った。
「ママ、おしっこ」
「くうちゃんえらいね。ちゃんとママに教えてくれて」
胡桃は、褒められたので嬉しそうに笑った。
「くうちゃん。ママと一緒にお風呂に入ろうか」
「うん、パパは?」
胡桃は返事をしながら、目をキョロキョロさせて父を捜している。
「パパはね。お仕事が忙しくて一緒に来れなかったのよ」
のぞみは胡桃を抱きあげながら、しどろもどろになって訳の分からない言い訳をした。
「だから、ママと一緒に先にお風呂に入りましょう」
「はい!」
「あら、くうちゃんも起きたの! おばあちゃんと一緒に入ろう。早くおいで!」
「は~い!」
のぞみが万歳させて服を脱がすと、パタパタと嬉しそうに走ってお風呂に入って行った。
(子供っていいなあ、あんなに嬉しそうに、裸になって走って行くなんて)
裸でお母さんの所に走って行く胡桃の姿を微笑ましく見ながら、そんな事を思っていたのぞみは、胡桃の背中に無数に出来ている黒いあざの様な点々が、目に入って来てギョッとした。
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