第1章 〔ひさご〕での日々

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「そうそう、のんちゃんがうちに来てくれると思ってなかったから、お布団ないのよ。今日は私の布団で3人で寝る事にして、明日、大丸に買いに行こう」 「有り難うございます」 「じゃ、お風呂に入って寝ようか」 「はい」 お風呂は大きくて広々としていた。まるで高級旅館の様な豪華な檜造りの風呂だった。 「のんちゃん、一緒に入ろう」 「はい」 と、返事をしたものの、今日出会ったばかりのお母さんと一緒にお風呂に入るというのは、いくら女どうしと言っても結構勇気のいる事だった。 でも、お風呂に入ってすぐに思った。ポンポンと歯切れよく話すお母さんだけど、眠いからなのか、足元がフラフラしていて、慌てて介添えしたくらいだった。 その時、胡桃の泣き声が聞こえてきて、のぞみは急いでバスタオルを体に巻き付けると走って行った。 「ママ、おしっこ」 「くうちゃんえらいね。ちゃんとママに教えてくれて」 胡桃は、褒められたので嬉しそうに笑った。 「くうちゃん。ママと一緒にお風呂に入ろうか」 「うん、パパは?」 胡桃は返事をしながら、目をキョロキョロさせて父を捜している。 「パパはね。お仕事が忙しくて一緒に来れなかったのよ」 のぞみは胡桃を抱きあげながら、しどろもどろになって訳の分からない言い訳をした。 「だから、ママと一緒に先にお風呂に入りましょう」 「はい!」 「あら、くうちゃんも起きたの! おばあちゃんと一緒に入ろう。早くおいで!」 「は~い!」 のぞみが万歳させて服を脱がすと、パタパタと嬉しそうに走ってお風呂に入って行った。 (子供っていいなあ、あんなに嬉しそうに、裸になって走って行くなんて) 裸でお母さんの所に走って行く胡桃の姿を微笑ましく見ながら、そんな事を思っていたのぞみは、胡桃の背中に無数に出来ている黒いあざの様な点々が、目に入って来てギョッとした。
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