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「くうちゃん。待って、待って」
想像を超える悪い予感がして、のぞみは追いかける様に走って行った。
「くうちゃん、くうちゃん、その背中の傷はどうしたの」
のぞみの声に、お母さんもびっくりして胡桃の背中を見て驚いた。
「どうしたの? これは?」
胡桃の背中一面にある、火傷の様な後を見たお母さんが尋ねた。
背中の傷はつい最近まで、痛め付けられていたのか爛れて赤く腫れあがり見ても痛そうだ。
「くうちゃん。痛いだろう? こんなにされて」
お母さんは、胡桃の背中を庇いながら優しく尋ねた。
「はい。痛いです」
「くうちゃん。誰にこんなことをされたんだい? パパかい?」
ただ夢中で、「違う違う」と言いながら首を振る胡桃を抱きしめながら、お母さんが聞いた。
「怖いおばちゃん」
「怖いおばちゃんって、誰だい?」
「町会長さんが連れてくる、怖いおばちゃんです」
のぞみが説明するより早く、胡桃が答えた。
「なんで、町会長が連れて来るおばちゃんが、こんな事するんだい?」
お母さんが、尋ねる度に胡桃が、はっきりと答えた。
「くうちゃんが言い付けを守らなかったり、忘れたりしたら、熱いの付けたりビリビリされます」
「何だって、いったい誰なんだい、その女は、町会長の嫁さんかい」
お母さんの目は怒りで、真っ赤になっていた。
「ううん、違います」
胡桃は小さいながらもはっきりと答えた。
のぞみは辛さのあまり、小さな胡桃の体に飛びついて抱きしめた。
(お母ちゃん、酷いよ酷いよ。くうちゃんをこんな目に合わせて…… お母ちゃんはくうちゃんをどんな事があっても守るって言ってくれてたのに)
のぞみは、耐えられず胡桃を抱いて泣いた。
「ごめんね。ごめんね。くうちゃん。ママ、守ってあげられずに…・・・あ~」
そう言ったまま、のぞみは可愛い我が子を抱きしめてわんわん泣き出した。
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