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「ママ、泣かないで」
小さな胡桃の手が、狂ったように泣く母の頭を撫でた。
「くうちゃん。痛かったでしょう。苦しかったでしょう」
「ママ」
「ごめんね、ごめんね。こんなに酷い目に遭わされていたなんて…… 」
のぞみは死んでしまいたい程、辛かった。
今日の様に一度でも、胡桃と一緒にお風呂に入っていれば、分かる事なのに、こんな酷い目に遭わされている事に気付かなかった自分を責めた。
「おばあちゃんの方がくうちゃんを庇っていっぱいビリビリするのんを押し付けられてたから、もっともっと痛かったと思う」
「えっ?」
ああ、なんてこと……! おかあちゃんと胡桃がこんな酷いことをされているのに、私は何も知らないでいたなんて
「どうして、くうちゃんはこんな目に遭わされてるのにママに言ってくれなかったの?」
「ママとパパに言ったら、くうちゃんを殺すっておばあちゃん、怖いおばちゃんにいつも言われてたから」
「こ、殺すって」
「うん。言うこと聞かんかったら殺すぞって」
淡々と恐ろしい事を言う、我が子にのぞみは茫然としていた。
「のんちゃん、もういいから、それ以上聞かないでやって」
裸のまま、茫然となっているのぞみに、お母さんが言った。
くうちゃん。その恐ろしいおばちゃんは、ここには絶対来ないから安心して良いんだよ。来てもこのおばあちゃんがえらい目に合わせてやるから、安心おし」
「はい」
(こんなに小さいのに余程恐ろしい目に遭わされていたんだろう。普通の子なら、こんな話になったらわんわん泣くだろうに、涙を流すどころか、逆に母を庇っている)
そんな胡桃の姿にお母さんは、居たたまれなくなって、のぞみが抱きしめて放さない胡桃を抱き取って言った。
「くうちゃん。悲しい時や辛い時は思いっきり泣くと良いんだよ」
お母さんの言葉に胡桃は、大きな目を見開いたと思ったら、お母さんの首に小さな腕を巻きつけ、大きな声で泣き出した。
それは心の中から、絞り出す様な声で、小さな体を震わせながら泣いた。
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