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「くうちゃん。お腹すいたね。どこかで御飯食べようか!」
「うん」
「何、食べたい?」
「ママのハンバーグ!」
「う~ん。ママのはちょっと無理だから。よ~し! おいしいとこ見つけに行こう」
「うん!」
明るく笑う我が娘のあどけない無い顔が、返ってのぞみの不安な心を締め付ける。
「ひさご」から横道を真っ直ぐ歩いていると、急に胡桃が立ち止まって言った。
「ママ、大好き!」
「ママも、胡桃が世界で一番好きよ!」
「ううん、胡桃の方がママの事、もっと、もっと大好き!」
可愛い我が娘の言葉に、のぞみは涙が出そうになった。そして、この子の為にクヨクヨしないで頑張って生きていかなくちゃと心に堅く誓うのだった。
母の気弱になっている心中を知ってか、胡桃はそっと小さな手を繋いできて、可愛い声で歌い出した。
「おてて、つ~ないで、野道を行けば~、みんな可愛い小鳥になって…」
「まあ、胡桃。可愛い歌を知ってるのね。誰に教えて貰ったの?」
「おばあちゃん!」
「へ~え」
感心して聞いていると、胡桃がスキップしてキュッと手を強く握ると嬉しそうに笑って来た。
のぞみも小さな手を握り返すと優しく笑い返した。
「ねえママ、くうちゃん眠たくなって来ちゃった」
見れば小さなあくびをして、ふあふあした目をしている。
「ごめん。疲れちゃったのね。くうちゃん、ハンバーグ食べたかったんじゃないの?」
「うん」
のぞみが眠そうな顔の胡桃をそっと抱きあげて、今夜泊まる所を探そうと考えていたら、後ろから女の人に声を掛けられた。
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