56人が本棚に入れています
本棚に追加
「くうちゃんというのね。可愛い顔してもう眠ってる」
ビクッとして振り返ると、【ひさご】の女将さんだった。
「ごめんね。さっきは酷い事言って」
「いいえ、私の方こそ失礼な事をしてしまって、申し訳なく思っております」
のぞみは胡桃を抱いたまま、深々と頭を下げて、先程の非礼を詫びた。
「子供を連れて、雇ってくれなんて言われたのは初めてだから、びっくりしてしまって、嫌な事を言ってしまったわ」
「いいえ、私の方こそ申し訳ないと…」
「あんな酷い事を言って、うちに来てくれって言うのもどうかと思うけど…」
「良いのですか! 働かせて頂けるのですか! 有り難うございます」
のぞみは胡桃を抱いたまま、何度も何度も頭を下げてお礼を言った。
嬉しくて、涙が止まらない。
働く所が見つかってホッとした気持ちと、居場所を見つけた安心感で、
「くうちゃんおいで、おばあちゃんだよ」
すっかり眠って、ぐたっとしている胡桃を、女将さんが優しく抱き取ってくれた。
「行こうか! 店に」
「はい!」
最初のコメントを投稿しよう!