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最初こそ、佐了は気持ちよさそうによがっていたが、絶頂を重ねていくにつれ、艶っぽい声は咽び泣きに変わった。舌の腫れが引き、言葉が出せるようになると、はっきりと拒絶の意思を示した。無理、嫌だ、止めてください……裕翔は耳を塞ぎたかった。
「赦して」
息も絶え絶えにそう口にした直後、佐了は意識を手放した。
これでやっと終わる。安堵したのも束の間、白髪の男は裕翔の拘束を解いて、「起こせ」と言った。
「鬼かっ! どう見たって限界だろっ!」
「ならばこのまま、こいつをここに放置する。粗蛇を突っ込んでおけば床が汚れることもないからな」
裕翔の心が揺らいだ。この男ならやりかねない。でも放置って、具体的にどれくらいの時間だろう。
「十日」
「っ……」
裕翔は目を見張った。自由を奪われた佐了を見る。この状態で、十日。正気の沙汰とは思えなかった。
「十日も経てば、こいつは本来の姿に戻る。そうなれば、お前もこいつも命はない」
男は妙なことを言って、佐了の拘束を解いた。佐了は小さく呻いたが、目覚めはしない。
「命が惜しければ俺に従え。ここは座貫。黒髪の者に人権はない」
さあ起こせ。白髪の男に言われ、裕翔は泣きたくなった。他の男に犯される姿を見るだけでも辛いのに、その手伝いをさせられるなんて。でも、従わなければ、きっと佐了はもっと酷い目に遭う。それでも黙って従うのは癪だった。
「なんで……佐了のこと、好きなんじゃないのかよ。好きだから、俺に触られて腹が立ったんだろ? 好きならもっと優しくしろよ。こんなことしてたら、佐了の気持ちはあんたから離れていく一方だぞ」
砂漠で押し倒した時のことを思い出した。
まるで好きにしろとでもいうように、佐了は乳を滴らせながら、こちらをぼんやりと見つめていた。
だから吸った。甘美な男の乳を味わい尽くした。
佐了は身勝手な白髪の男より、得体の知れない黒髪の男を選んだのだ。
「無知な愚か者。貴様は何もわかっていない。こいつが、俺から離れることはない」
白髪の男はそう言って、佐了を仰向けにひっくり返した。正面から、めりめりと押し込めていく。
佐了のまぶたがヒクリと動く。目覚めはしない。
「何をしている。早く起こせ」
「……わかったよ。やればいいんだろ」
裕翔は佐了の頭上に回った。苦しそうに喘ぐ姿は、悪夢にうかされているようだ。こんな状態の相手に行為を続けるのかと、裕翔は胸糞悪くなる。
裕翔は佐了の頬をペチペチと叩いた。まぶたがひくつく。でも起きない。
白髪の男を見ると、顎で「やれ」と圧力をかけてきた。
「佐了、ごめん……」
パチン、と強く張った。
「ん……」
薄く、まぶたが開いた。自分を貫く男を見て、佐了はギョッと目を見開く。次に、頭上にいる裕翔を見て、さらに大きく目を見開いた。
「んああっ」
佐了が状況を理解したとわかると、白髪の男は容赦無く突き上げた。
「ひっ、ああっ……はあっ、ああっ」
「佐了っ……」
裕翔は頬を叩いた手で、佐了の頭、額を撫でた。無意識だろうか、佐了がすがるように、裕翔の手に顔を擦り付けてくる。
「起こせ」
佐了がまた意識を飛ばした。命じられれば、従うしかない。自分の手に顔を委ねて眠る男を、裕翔は強く引っ叩いた。
「あ……ひあっ、ああっ」
佐了が涙ぐんだ目で裕翔を見上げる。苦しそうな表情に、裕翔は胸が詰まった。
「起こせ」
次第に、意識を飛ばすペースが速まっていく。眠気もあるのだろう、起きても佐了の目は虚だった。
「これ以上はっ……」
「起こせ」
裕翔はブンブンと首を振った。
「もう限界だっ……体温が高すぎる……汗もひどいっ」
「起こせと言っている」
裕翔は正面の男をキッと睨んだ。
「……やりすぎだ」
「それだけのことをした」
「そんなに俺に乳を飲まれたことが許せないか?」
ムカついて、つい挑発的なことを言ってしまった。白髪の男の視線が、佐了の胸元へ注がれる。つられて裕翔もそこを見た。
「こいつの乳がどれだけ神聖なものか、貴様にはわからないのだろう」
白髪の男は、佐了の乳首をキュッと摘んだ。
「んっ……」
搾乳するように、引っ張りながらギュッと押しつぶす。
「もっ……でなっ……」
佐了は目を閉じたまま、いやいやとかぶりを振った。
「赦して……くだ、さい……もうっ……ちちうえっ……」
「っ……」
裕翔は驚いて、白髪の男に戸惑いの目を向けた。
「こいつの乳はな、家族の飢えを潤すためのものなのだ。よそ者が軽々しく口にできるものではない」
乳首を捻り上げる。
「ひっ……父上っ……もう……っ」
でも、乳が出たのは極めた時だ。
淫乱に仕込まれた……白髪の男の言葉を思い出し、裕翔は戦慄した。
白髪の男は、口角をわずかに引き上げた。
「こいつは三日おきに乳を搾り取られていた。乳は三日かけて作られるからな。その日になると、腹を空かせた家族は一斉にこいつを取り囲んで裸に剥く。そして一番手っ取り早い方法で乳を搾り取る」
「ううっ、ん……とっ……兎斗っ……兎斗が……」
「家族に犯され、極めながら、カラになるまで乳を吸われるのだ」
白髪の男は腰を揺すった。佐了の体が浮き上がる。
「あっ……もう、でっ……でなっ……」
「起こせ。でなければこいつは父親に犯されたままだぞ」
「はあっ……父上っ……やっ……」
悪夢の中で佐了は父親に犯されている。それは、嫌いな相手にされる以上の苦痛かも知れない。
「あ、んっ……ああっ……父上っ……兎斗がっ……見てっ……はあっ」
「父親に犯される姿を、幼い弟につぶさに見られているのだ。早く起こしてやれ」
白髪の男が腰を揺すりながら言った。佐了はかたく目を閉じている。
「佐了、起きろ……」
裕翔は佐了の頬をペチペチと叩いた。佐了は「父上」と繰り返す。
パチン、と腫れるほど強く叩くと、佐了のまぶたが開いた。
裕翔を見上げた虚ろな目が、幽霊でも見たかのように、大きく見開かれた。
「兎斗……」
まだ悪夢の中にいるのだろうか。佐了は唇を戦慄かせ、言った。
「あっ、見る……なっ……兎斗っ……」
「佐了っ……俺だよ……っ」
佐了は激しく首を横に振った。
「兎斗っ……ひっ、ああっ……ちち、うえっ……ああっ」
佐了は自分を犯す男を見た。それでやっと、夢から覚めたようだった。ハッとしたように裕翔を見る。
「俺だよ。裕翔だ……」
白髪の男によって突き上げられ、佐了の体が大きくのけぞった。
「ああっ……」
喉を突き出し、体をビクビクッ、と痙攣させると、佐了はまた、ぐったりと意識を失った。
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