夏の贈り物

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 夏休みがもう少しでやって来る。  どうせ何もない夏休みだけど。  スクールバスの窓から外を眺めていると、公園傍の広場で何やら大きな施設の設営が始まっていた。 「サーカスが来るのよ」  隣に座るクラスメイトが、鏡の中の自分から目を逸らさずに言った。 「ふーん…」 「何?興味ないの?私はマットと行く予定。彼、絶対私のこと好きよね?」 「そうだね」  エミリーは外の景色から目を離さずに答えた。  一週間後スクールバスから見えたのは、完成した大小様々なテントと、取り囲むように並んだ屋台だった。  興味がないふりをしていて、カラフルなテントは見ているだけで心躍るものがあった。 「行こうかな」 「行くの?一人で?」 「そのつもり」 「寂しいーっ。誰でもいいから誘えばいいのに。あ、マットは別の子と行くんだって。だからデイブを誘ったんだ。彼めっちゃかっこいいから彼女いると思ったけどまさかのフリーだったの!」 「よかったね」  彼氏ってアクセサリーか何かなのかな。  母さんにとって父さんてどんな人だったんだろ。  どうして結婚したんだろ。  どうして私は生まれたんだろう。  父さんは私をどう思ってるのかな。  夏休み初日、彼女は一人サーカスに向かった。  母に言うと煩いので、友達の家に行くということにして。
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