夏の贈り物

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 翌日もエミリーはサーカスへ行った。  昨日とは違い、まっすぐにマジシャンピエロの元に向かう。  彼の前はもう人だかりが出来ていて、エミリーは「ごめん」と言いながらも自分より年下らしい子供を押しのけて前に出た。  トランプ、輪っか、コインのマジック。  テレビでも見るような簡単なマジックだけど、音楽に乗せて流れるように披露されるマジックは彼女のみならず周囲の大人の観客も拍手をして見物していた。  彼は昨日と同じく、ワスレナグサをエミリーに差し出し、挨拶をするとテントへ消えてった。  それからほぼ毎日、彼女はマジシャンのピエロを見に通った。  珍しく母が家にいる日は詮索されたくなくて行かなかったが、宿題をやるふりをして眺めるのは貰った青い造花だった。 「父さんだったらいいのにな」  友達には父がいて母がいる。  共働きも多いけど、夕食は一緒に食べてるし、帰宅して一人じゃないことの方が多い。  裕福でなくてもなんでもいいけど、家族ってやつが欲しかった。  母にはそんなこと言えないし、友達にも言わないけど。 「エミリー、ランチ行くわよ」 「どこー?ケチャップダイナー?」  造花を机の引き出しにしまうと、部屋を後にした。  安いからよく行くダイナーは、味は微妙。  エミリーはケチャップをかけて味を誤魔化すから、心の中でケチャップダイナーと呼んでいた。
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