夏の贈り物

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「ねえ母さん」 「なに?ちょっとケチャップかけすぎじゃない?」 「ここのはこれでいいの。ねえ花言葉って知ってる?」  母が驚いたような不思議なような、このダイナーみたいに微妙な顔をした。 「急に何?まあ少しくらいなら?なんの花?」 「ワスレナグサ?青い小さい花」 「”私を忘れないで”ね」 「即答じゃん」 「有名な花よ。ドイツの神話?色にも意味があるらしいけど、私はそこまで知らないわ」  そう言うと母は微妙な味のポテトを摘まんだ。 「あなた彼氏でもできた?」 「ジェーンには出来たらしいよ、イケメンだって」 「ふーん、あれ?あの子この間はマットとか言ってなかった?」 「フリーなら誰でもいいみたい。まあ人のものとらないだけマシだよね」  母は急に目を逸らすとエミリーと同じくケチャップをかけた。  ふーん、母さんの離婚理由って、もしかして不倫とか?  まあ、どうでもいいけど、今更。  エミリーはチリビーンズをぐるぐるかき回すと、口に運んだ。ケチャップ味だった。
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