炊飯器の魔王

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 コンセントを抜き、電力を断つ。余熱が冷めたら庫内は極寒で乾燥した密室になるだろう。  念のために封印もしておこうかな。  検索すると、厨二病心を刺激する「封印のお札」の画像がたくさん出てきた。図工3の画力でチラシの裏に模写して切り取り、セロハンテープで炊飯器に貼る。 「うん、上出来」  手製の封印を施した炊飯器を半透明のゴミ袋に入れ、口をしばる。置き場所に困るが、とりあえずベランダの隅に安置した。  世は国民総節電時代。温暖化待ったなしのこの地球に、魔王のために消費する電気などないのだ。 「私、もしかして世界を救っちゃったのかな」  剣や魔法が使えなくても、勇者にはなれる。ナンチャッテ。  親戚のおじさんから(リアル)で聞いた死語を脳内でリサイクルしつつ、スマホでフリマアプリを開く。  白米一合が炊けるコンパクト炊飯器は、中古で2300円だった。 【了】
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