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遅れてやってきた店主の後には、大きな牛のようなものが横たわっている。
「……色々聞きたいことはあるが、店主。とりあえず、それはなんだ?」
「これか? ちょうど罠にかかっててな。今日のメインは水牛が出せそうだ」
再び頭を抱えたジルに、とても嬉しそうな笑顔で応じる店主。その店主の獲物に目を輝かせながら、リーナは闘志を燃やしていた。
……私もあれぐらい食べ応えのある獲物を釣りたい……! そしてお腹いっぱい食べるんだ!
竿をいっそうの力を込めて握りしめ、水面を見つめるリーナ。その傍らで、新たに釣りの準備をしながら、店主はにこにことその様子を見守っていた。
――それから、2時間後。
釣りの道具を構えて一向に動こうとしない二人の様子に、途中で説得を諦めたジルは、絶対に無茶はせずなにかあればすぐに海岸へ逃げるようと念押しして調査に向かっていた。
釣りの成果は上々で、店主のいけすの中にはかなりの獲物が入っていた。一方、リーナの方は……
「なんでだー! どうして一匹も釣れないの?!」
かれこれ2時間、一匹も釣れなかったのである。
「まあ、そんな日もあるさ。そろそろ切り上げて、また今度頑張ろう?」
「お願い! あと少しだけ! 片付けながらほんのちょっとだけ!」
「あとちょっとだけだよ」
――お願い……! 何でもいいから、なにかかかって……!
半ばやけになりながら、竿を握りしめる。そんなリーナの願いが届いたのか――
ドゴゴゴゴ……
地鳴りのような音とともに水面が大きく揺れた。そして……
「なにかかかった!!」
目を輝かせながら、しっかりと竿を握り直して戦闘モードに入るリーナ。
……何事も最後が肝心! ちゃんと釣り上げなきゃ!
気を引き締めるリーナのそばでは、相棒がなんとも言えない様子でつぶやいた。
"これは……ちょっと大きすぎませんか……? マスター、これは諦めましょう? "
「なにを言ってるの、クーちゃん! 初めてかかった獲物なんだよ! 何が何でも釣り上げる……!」
"いや、これは……ちょっと、まっ "
「あと、ちょっと!! ……せーの!」
バッシャーン
水しぶきとともに大きな何かが釣り上がる。何が釣れたかとわくわく引っ張るリーナの眼の前に現れたのは……
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