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「閉門ー!」
「危なかったあ……」
閉門を告げる声を聞きながら、何とか街に入れたことに肩をなでおろす。たどり着いたのは、海に隣接する都市グリーディア。国の中でも有数の港を持ち、交易が盛んな都市だ。さらに、有名なダンジョンを3つ保有していることでも有名な場所である。ここグリーディアは、都市を囲うように防壁が建設されており、日が沈む時には安全のため外とつながるすべての門を閉ざす決まりとなっている。
……もう一晩野宿は、さすがに避けたかったからほんっとに良かった。
街に無事は入れたとなると、あとやらなくてはならないことはただ一つ。
「夜ご飯を食べに行こう!!」
――――――――
「さあて、どこにしよっかな~」
いつになくハイテンションで夜ご飯を食べられるお店を見て回るリーナ。
” 少しは落ち着きなさい!ここに来るのが初めてってわけではないでしょう?”
ハイテンションの相棒に危機感を抱いた人物、いや外套がそんなリーナに声をかけた。
「そうはいかないよクーちゃん、私はこの日を待ちわびていたんだ!」
そんな制止もむなしく、リーナは興奮の収まらない様子で声をあげた。
そう、リーナがこの場所に来るのはこれが2回目。しかし、以前来た時には、緊急の依頼が舞い込んで海鮮料理を満足に味わうことなく立ち去ることになってしまったのだ。結果、グリーディアの海鮮料理への高まったわくわくが止まらない今のリーナに至るのである。
「前は仕方なかったけど……今回は心ゆくまで私はここの海鮮料理を堪能する!!」
かたい決意をのべながら、腕をつきあげるリーナに、
” ……ちょっと落ち着きましょう、マスター。まず、一人で声を張り上げてたら、周りの人に不審な目で見れちゃうから。……もう若干手遅れだけど”
「ん? まあ、細かいことは気にしない、気にしない。あっ、そこの人!ここらで美味しい店知らないかな?」
” はあ……”
気にせず手当たり次第に声をかけるリーナに、旅の行く末を思いやってため息のつくクーであった。
若干周りに引かれながらも、気にせず夜ご飯を求めて聞き込みを行っていくこと1時間。リーナは聞き込みで教えてもらった料理店にいた。その料理店は知る人ぞ知る!といった感じの少し奥まった位置にあった。ここを見つけられたのは、引かれながらも聞き込みを続けた、リーナの執念のなせる業である。
「店長! これと、これも追加で!」
「良い食べっぷりだねえ、嬢ちゃん。」
いくつかのテーブル席とカウンター席のあるアットホームな店内。そこですっかり店長となじんだリーナは素晴らしい海鮮料理に舌を鳴らしていた。
「おいしい~~!」
……これは、クラーケン?こっちの素材は何だろう?後で店長に聞かなくちゃ!オリーブと塩で程よく味付けされたホイル焼きも最高すぎる!!ああ、ここは天国かな?
幸せをかみしめながら、海鮮料理を堪能する。すべて完食し、少し店長と雑談してから席を立った。
「まいどーまたおいでお嬢ちゃん! 次は、トマト煮込みも用意しておくよ!」
「ごちそうさまでした! また来ます!」
店長に手を振りながら、先ほどクーの助言でおさえておいた宿に向かう。
” クーちゃん、とっても美味しかったね!”
宿に向かいながら、相棒に話しかける。
” そうね。私が食べたわけではないけれど、あなたが料理を美味しく食べることが私の生きる活力につながるから。”
” うんうん。これぞウィンウィンの関係だね!!”
他愛のない会話をしていると……
” ……マスター。”
” 気づいてるよ。……3人かな。”
足を止めて振り返り、真っ暗になった夜道を見やる。
「出てきなよ。」
ふらふらと男が2人、姿を現した。
「何か用かな?」
間合いを常に意識しながら、問いかける。
「ずいぶんいいもの持ってるな? その外套とあり金、全部よこせよ。」
……めんどくさいのに絡まれた。
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