6人が本棚に入れています
本棚に追加
「へえ……。この外套、渡したところでおじさんたちには小さすぎるんじゃない?」
穏やかな口調で問いかける。
「ふん、ごちゃごちゃ言わずに早く寄越せ。それがマジックアイテムだってことはもう分かってんだ。」
……鑑定持ちか。はあ……ほんとにめんどくさいのに捕まっちゃったなあ。
マジックアイテムはそのランクが上がるにつれて擬態の能力も高くなり、見つけにくくなることが知られている。リーナの保持するマジックアイテム《クイジンポケット》は最上ランクのS級に相当するため、これに気づくことが出来るのは、同じS級マジックアイテム保持者か、鑑定機能のあるマジックアイテム持ちになるだろう。……今回の相手は後者だ。
「あいにく、この子は私の大事な相棒だ。渡すことはできないな。」
「……おとなしく渡していれば痛い目を見ずにすんだのにな。」
その言葉と共に、二人同時に切りかかってきた。その攻撃を一歩下がってよけながら、愛刀の名を呼ぶ。
「アリファシナ」
「っ?!」
名と共に現れたのは、赤い気を纏った《魔剣》。
《魔剣》とは魔力を込めることで、威力の向上や特殊効果を付与できる剣のことである。
アリファシナに魔力を少し込めながら、目の前の2人に振りかぶった時、真横から矢が数本とんできた。向きを変えて矢をすべてはじく。一本の矢を掴んで投げることで1人を無効化。
「アリファシナ……? まさか……! おいっとま「ひるむな! 体格差があるんだ! 力で押せば……ってあいつはどこだ?」
「……ここだよ」
背後に回ったリーナに気づいたときにはもう遅く、素早い動作で1人が気絶させられた。最後の1人に刃を当てながら、通告をする。
「次やったら命はないと思え。他の2人にもそう伝えておいて。」
話し終えたところで、最後の一人を気絶させ、3人まとめて衛兵に引き渡した後、ようやく宿にたどり着いた。そのままベットに倒れこむ。
「……なんか、疲れちゃったねえ。」
” だから、落ち着いて周りを見なさいって昼間にも言ったでしょう? 一日あんだけハイテンションだったら疲れもするわ。そして警戒が緩みすぎよ、マスター。”
「そうはいってもだよ? クーちゃん。長年の願いがやっとかなってここまでこれたんだ。仕方ないだろう? それに、あれくらいなら大したことはないさ……それより、ちょっと小腹がすいてきたかな?」
” ……マスターの食べ物への執着はほんとにすごいわね。あれだけ食べて、まだ食べるの……”
「デザートは別腹だよね! さあ、クーちゃん! 私にイチゴのショートケーキを!」
” ……一切れにしておきなさい”
こうして、しっかり一切れのショートケーキを食べきり、リーナは眠りについたのであった。
……明日はどんなものをたべようかな?
最初のコメントを投稿しよう!