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「店長~! また来たよ~!」
ジルを連れてやってきたのは、昨日の夜にも訪れた料理店。
「おっ、嬢ちゃんいらっしゃい。今日はいい素材が入ったから、昨日言ってたトマト煮込みもいい仕上がりになってるよ!」
「なんと! それは食べなくちゃ! あっ、今日は2人分よろしく!」
「はいよ。お連れさんもどうぞ。」
早速店長に何品か注文して、席に座る。
「……昨日グリーディアに来たばっかりだったよな?元からの知り合いだったのか?」
店長とのあまりの打ち解け具合に、驚いた様子で尋ねられた。
「ん? 昨日知り合ったばっかりだよ。すごく料理の話で盛り上がってね! ねっ、クーちゃん」
「そうなのか……」
” 昨日はマスターが暴走して大変でしたよ……”
「暴走はしてなかったよ?」
” ……”
" ははっ、相変わらず苦労してそうだな。こうやって話すのは久しぶりだな、クイジン"
” そうですね、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。”
" そっちもな。リーナはところどころ常識が抜け落ちてるからなあ。クイジンがいてくれて安心だよ。"
念話で何やら挨拶を済ませた二人の会話を聞きながら、私は普通だけどなあとリーナはつぶやき、待ちきれずに調理場の方へ目を向ける。
……もうすぐ料理がくるかな?
すると対面に座ったジルが微笑ましそうにそわそわするリーナを眺めて、少ししてから口を開いた。
「そういえば、リーナはいつまでグリーディアに滞在するんだ? 半年くらい休みをとったっておまえの師匠から聞いたけど」
基本的に探索者は、素材調達などの仕事の受注やダンジョン探索を自分の裁量で進めていくため、休むのに許可を取る必要はない。しかしリーナは師匠から国の機関であるカランの統括補佐という役職を与えられているため、休みを申請しなければならなかったのだ。
「とりあえず2週間くらいは滞在するよ? 心ゆくまでここの料理を堪能したいしね!……それからは西の方に行くつもり」
「西……カレンディナのほうか。」
ジルが続けて何か言おうとすると、ちょうど店長が料理を運んできてくれた。
「……!! 美味しそう!!」
「こっちはサーマルという海の魔獣の肉を1日煮込んで作ったものだ。多めによそっておいたよ」
「ありがとう!!店長!」
満面の笑顔でお礼を述べながらも、料理に目が釘付けなリーナ。
「それじゃあ再開を祝って」
「「乾杯!」」
――――――
その日、二人が別れるときには、すでに周囲は暗くなっていた。
リーナもジルもかなりの大食いだ。
結局夜まで美味しい料理を堪能した2人であった。
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