リーナの食い倒れ旅

リーナの食い倒れ旅ー序章ー

「今日は、何を食べようかな～♪」

ある日の昼下がり、鼻歌交じりに森を歩きながらリーナは今日の昼食に思いをはせる。

「トマトパスタ～ロールキャベツ～それとも～♪」

リーナの趣味は、食べること、そして自分が知らない未知の料理を探すことだった。
そんなリーナには、とても大切な相棒がいる。

「よしっ！　これに決めた！」

昼食を決めたリーナが、外套のポケットに手を突っ込んで取り出したのは……

「やっぱり、今日の気分はこれだね！　夏野菜たっぷりのラタトゥイユ！　トマトの酸味にさっぱりとした味わい、これとパンを合わせれば……むふふ」

少し不気味な笑いと共にポケットから取り出されたのは、パンの上にラタトゥイユを乗せた料理。

リーナが羽織っていた外套、これこそがリーナの長年の相棒であるマジックアイテム《クイジンポケット》。思い描いた料理をすぐさま取り出せるこのマジックアイテムは、食べることが生きがいのリーナにとってかけがえのない存在であった。

――――マジックアイテムとは、不思議な能力を持つアイテムであり、ダンジョンを攻略すると手に入れることが出来る。アイテムの能力のレア度に応じてS, A, B, C, D級にランク分けがなされ、上位のアイテムほど高値で売買される。S級のマジックアイテムに至ってはほとんど存在が確認されておらず、これを手に入れることが多くの剣士や魔術師といった者たちの憧れなのであった。

「ふふっ。幸せだなあ～。（もきゅもきゅ）美味しい……これも君のおかげだね」

そうやって長年の相棒に笑いかけると……。

” ……わたしの能力にそんなに喜ぶのは、あなたくらいよ”

「ふふっ。これからもよろしくね！　さあ、まだ見ぬ料理を目指して、出発！」

きっちり完食すると元気よく立ち上がり、リーナは再び歩き出す。

これは、食べることに異常な執着を抱いた少女とポケットの食い倒れ旅の物語。
さて、彼女たちの旅路にはどのような料理が待っているのであろうか。

《クイジンポケット》――S級
所有者：リーナ（魔剣士）
能力：使用者の思い描いた料理を与えることが出来る。ただし以下の条件を満たす必要がある。自らの意思を持ち、料理に付与魔術をかけることが可能。
＊１　一度は作ったことがある料理であること
＊２　使用者が心から美味しいと思った料理であること
＊３　前にポケットから取り出した料理が完食されていること

使用回数：１日３回
使命：料理の楽しみを広める