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それは、魔獣の企みで
『ふふ。そうでなくてはな』
魔獣は満足そうに笑った。その姿がさまざまな魔力を受けて、急激に小さくなる。
「え?」
眞庭が瞬きする間に、魔獣は最初の大きさに戻った。尻尾は十本のままだったが。
『我が主人。これでわかったろう? 其方の力は大きすぎ、きちんと管理しなければ危険だと』
眞庭の肩に止まった魔獣が、眞庭の頬に顔を擦り付けながら笑った。
「ちょっと待ちなさい。今までの騒ぎ全部、眞庭君に自分の力を教える為の茶番……?」
空から戻った羽生が手を戦慄かせながら近寄ってきた。
魔獣は平然と言う。
『我が主人は自惚がすぎる。我を支配下に置くポケットの縫い付け方すら夢の中で聞くような慢心は危険だ』
バレてた! よりによって自分の魔獣に。だけど、そんなことを言うなら魔獣は自由になりたかったわけじゃなく、私の力を教えてくれていたの? そう眞庭は思った。
今までの騒ぎ、はた迷惑もみんな魔獣の親切だったって事?
「そうね……確かにそうね。でも、それをここまで大騒ぎする必要はあったの?」
『暴れた方が楽しい』
魔獣の言葉に羽生は呆れるしかないように笑った。
「眞庭君。とりあえず君はちょっと来なさい。その魔獣ともども、校長先生にキッツイお仕置きしてもらうから」
「せ、先輩……その、私、そろそろ入学式に行かないと」
なんとか誤魔化せないかなと空笑いをする眞庭の肩を羽生がむんずと掴む。
「この騒ぎで入学式なんかできると思ってるの! ほら行くわよ!!」
羽生に引き摺られていきながら、眞庭は覚悟を決めた。入学式の前に放校処分になりそうな事しちゃったけど、これも私の魔獣と仲良くなるためには必要だったのかも。
「ははっ……でも、これからよろしくね、私の魔獣」
魔獣は可愛らしくピッと一声発し、魔女のポケットの中に滑り込んだ。
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