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魔庭で
そこは、大規模な魔法を使う時や、時空を歪ませるほどの予言を受ける時に使う、特別な庭。
魔法の規則に従って植った数多の鉱石が、様々な光を放っている。
何の魔法が行われていなくとも、そこには強い磁場のようなものがあった。そして……。
「いたっ!」
眞庭の魔獣が一番大きな鉱石に絡みついていた。その尻尾が十本に増えている。
「絶対に捕まえるわよ」
「はい。羽生先輩!!」
眞庭がそう言うと同時に、羽生は背中に羽を生やした。二、三度羽ばたき宙に浮く。
「私が抑えるから、眞庭君はポケットを広げなさい」
「え? ポケットを広げる?」
「やればできるから!!」
そう言い捨てて、羽生は空を舞った。飛びながら魔法を放つ! だが十本尻尾の魔獣は悠々とその魔法を相殺した!
「これほどの魔力が意志を持ってるというの!?」
羽生が魔法を放ち、魔獣が相殺する。何度もそれを繰り返し、いきなり魔獣が攻守を変えた!
「くうっ!」
羽生が力に押される。眞庭は兎に角アワアワするしかできなかった。
「ど、どうしよう!? どうしたら……!!」
「眞庭君! この場所の力を使うんだ! ここは魔庭! 君の力の元になる『庭』だ!!」
「わ……わかりました! 先輩! 私やってみます!!」
眞庭は半泣きになりながら、意識を集中した。確かに、魔獣がいない今でも大規模魔法が使える。この庭の力は、眞庭に親和性がある。裸足の足から流れ込む大きな力が眞庭に寄り添ってくれる。
「庭……魔庭。私に力を貸して……」
そう言いながら、眞庭は魔法を練り上げた。魔獣を中心として大きな籠を編みあげる。
「大人しくしなさい!」
そして、眞庭は魔法を発動させた。だが、魔庭かから力を受けているにも関わらずその籠は!
『うおおーーーーん!』
魔獣の遠吠え一つで崩壊した。流石に羽生も目が点になる。
「あの魔力を崩壊させた!?」
「ど……どうして!?」
眞庭が呆然と呟いた。さっきの魔法は魔庭から力を受けた自分の最大威力だったのに!
と、魔獣が眞庭をその赤い瞳で見た。
『我が主人。其方の力はその程度か? 我は庭。自然の力を受けて人工の美しさを得たもの。我が主人も全ての自然を利用できるはずだ。その魔力を』
「な、何言って……?」
『我は其方に力を渡したはずだ。その力を持っても我を捉えられないなら、其方はその程度』
魔獣がせせら笑ったように見えて、眞庭は本気で一瞬イラッとした。何で自分の力に笑われなくちゃいけないの!?
「いい加減な事を……」
そう言いながら、なぜか眞庭はポケットの重さを感じた。その中には色々な形に加工された魔力が確かに存在している。その力が使える、自分を使えと言ってきている。それがわかった。
「あんたがそう言うなら、絶対に捕まえてやるんだから!!」
眞庭はポケットの中身を開放した。
風が魔獣の周りを渦巻き、数式が難しい魔法を完成させ、魔力を帯びた合唱歌が伴奏付きで聞こえてきて、ミニチュアの魔女たちが杖の先についた金平糖を光らせ眞庭の魔法を強化する!!
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