生徒寮の前で

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生徒寮の前で

 魔女のエプロンのポケットは、魔法の源だった。 「どこに行ったのーーーーーーーーーー!!」  そう言って、魔女学院の生徒寮から飛び出してきたのは、裸足で、寝癖のついた髪を整えてもおらず、魔女の制服を雑に着ただけの一人の少女だった。 「待ってよ眞庭(まにわ)!! とにかく靴ぐらい……」  彼女を追いかけてもう一人の少女が寮の入り口から転がり出てくる。だが、その目前で。 「きゃあっ!」 「全く! 前見て走りなさいよっ!」 「ご、ごめんなさい先輩! はっ! 早く探さなきゃ……」  眞庭と呼ばれた少女は、大きな鞄を抱えた先輩魔女と勢いよくぶつかり、鞄の中身が道に撒き散らされる。だが、眞庭はそれに気づいてもいないのか、謝るのもそこそこに走り出した。  のだが。  その眞庭の足元に絡むように、細長い毛玉がすうっと通って。  足がもつれた眞庭は当然すっ転ぶ。そして。  ガチっ!  空中に投げ出された眞庭の踵が着地する瞬間、何かを強打した。それは、先輩の鞄からこぼれたビー玉のような魔術石だった!  そのショックで魔術石から魔術が放出され、生徒寮の前の通路はパニックになる。  登校しようとしていた幼い魔女見習いたちのスカートが捲れ上がるほどの強風が吹き、甲高い悲鳴があちこちから上がる。その風は一瞬楽しげに吹き回ると。  眞庭の制服のエプロンのポケットに吸い込まれた。 「イタタタっ! いっけない! 早く見つけないと!」  倒れて目を回していたため、魔力の突風からは逃れられていた眞庭は、騒ぎが収まるのと同時に立ち上がる。そして、きょときょととあたりを見渡した。 「本当にどこに行ったの!? う……はっ、そうだ!」  そうして、何か思いついたという顔で走り出した。 「こらっ! 眞庭さん!! 何してるの!! 入学式はそろそろはじ……」 「すみません! 舎監先輩! 入学式には間に合うようにします〜!」  寮の入り口から顔を覗かせた舎監を一寸振り返り、眞庭はそれこそさっきの突風もかくやという勢いで校舎の方に駆けていった。
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