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ポケットの中に、色とりどりのおはじきが入っている。
透明なポケット。
透明なコートのポケットに見える、色とりどりのおはじき。
ひとつひとつ道標のように置いていく。お菓子の家に着いた、かの兄弟のようだと思いながら。
じゃらんじゃら音がする。平たいガラスが擦れる音。
もう片方のポケットには、ビー玉が入っている。
太陽にかざしながら、片目を瞑る。眩しい。それはそうだと思いながら、ポケットの中で遊ばせる。
うちに帰ったら水槽に入れようと思った。金魚たちも喜んでくれるだろうか。それとも、花瓶に入れようか。道端に咲く花に目を向ける。浅い花器がいいかな、透明の。庭に咲く花を思い浮かべる。
鳥が囀り、葉がざわめく。美味しそうなパンの匂いが鼻をくすぐったとき、揺れるカーテンが目に入った。
「いらっしゃい」
キミがその窓から顔を出した。
「ちょっと待ってて」
籠にいっぱいのパンを持ったキミが、その家から飛び出してきた。
「こっち!」
僕の手をガシリと掴み走り出し、気がついたら僕らはガーデンテーブルに座りパンと紅茶で話に花を咲かせていた。
帰りたくないな。と、ポケットの中でビー玉が踊った
とき、水滴が顔にかかった。
雨?
ふと空を見た瞬間、空の色が変わった。さっきまで青かったはずの空の色が、星の煌めく空に変わっていた。
フッと横を見ると、金魚が僕をジッと見ていた。僕の金魚は、普通の金魚とは違うと思う。他の人はきっと金魚とは呼ばない。でも僕にとっては金魚。だって君がその名を気に入ったから。
ポケットに忍ばせていたビー玉に手を触れようとして僕は気づいた。
「ねぇ、僕今日どこにいた?」
ここを指差すキミは、太陽のように笑っていた。
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