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朝日楼に着いたのは夕方だった。チェンもといサンダーは助手席に居座り、いびきを掻いて寝ていた。豪胆な男だ。
「執行は明日の朝行うが…ガイ、大丈夫かい」
「オーケーオーケー」
執行の朝、サンダーはまたも派手な格好をしていた。黄色のスーツに黒のシャツ。開いた胸には金のアクセサリーがぎらぎら光っていた。
「死刑の日は一番おしゃれな格好をするでしょう」
ムスクの香水までつけている徹底ぶりだ。
「はっ、ガイは面白いことをするな」
朝食の粥とラムチョップも平らげ、おかわりまで要求した。
「悪いが脱いでもらうがいいかい」
地下室につく。全て脱いでもらって、代わりに専用の繊維でできた下着を着けてもらう。コンタクトレンズも外してもらった。
「これでいいかい」
丁度ヘレンが入ってきたところだった。見事な体だがあちこちにいたずら書きのような入墨が彫られている。ヘレンは体を舐め回すように見ていた。
「最高ね。何人の女があなたの肉体を称賛したのかしら。溶けてしまうのは勿体ないわね」
サンダーの目に動揺が浮かぶ。流石に死に方は知らなかったのだろう。
「あなた、さしずめ縛り首か銃殺か電気椅子くらいしか考えてなかったのでしょうね。あなたは苦悶の表情を浮かべながらそこの液体に生きたまま溶かされるのよ」
ねっとりとした口調で言いながらバスタブを指した。蜜色の液体が揺れる。
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