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ジムはアブラハムから命じられた。
「あの研究所にいて欲しい。好きな実験をしてくれて構わない」
潤沢な研究資金と定期的な地位向上を約束され、ジムは研究所に事実上幽閉された。
これは一見好条件に思えるかもしれない。しかし、アブラハムの思惑はわかっていた。一つはヴェノム製造の秘密を守ってほしいこと。もう一つは、娘を蘇らせてほしいこと。
ヘレンを撒いてから数年たち、荒野は森になった。研究所と町を隔絶する城の門のようだ。不思議なことに、森はまるで生きているようだった。ジムがジープで町に行くときは道がひとりでにでき、突然変異で生まれた動物たちはジムに友好的だった。
ジムも老いた。もうすぐ還暦になる。ハーマンは退職して南部の実家に帰った。もう亡くなっているだろう。
森の動物たちの様子を見に行く。小動物七匹がやってきた。言葉を話せる動物でメガネを掛けているような模様がある。ジムは彼らを「七人の小人」と呼んでいる。
「先生、お姫様が森を出たよ」
なんのことか。
「僕たちが世話していたんだよ。これで先生は孤独じゃないよ。早く研究所にかえるんだよ」
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