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わたしたち四人は高校のクラスメイトであり、学校からの帰り道、頻繁にこの堤防に寄り道をした。この町の東側を縁取る海は透明度が高く、綺麗だ。だから夏場は制服のまま波打ち際で遊んだ。そのたびにみんな制服を海水と砂まみれにし、それぞれ親に小言を言われたものだった。わたしたちの高校生活は常にこの海とともにあったと言っても過言ではない。
高校の卒業式がとりおこなわれた今日も例外ではなく、わたしたちは海辺にいる。卒業式を終え、教室で他のクラスメイトたちとひとしきり会話をしたあとで、わたしたちはいつもの場所に移動したのだ。四時頃からここでとりとめのない話をし、今に至る。しかしわたしはこれまでの一時間で話した内容を少しも覚えていない。
わたしの頭は、手紙のことでいっぱいだったからだ。
手紙は今、わたしのブレザーのポケットの中に入っている。
わたしはこれまでの一時間、ポケットの手紙を指で触りながら、それを渡すタイミングについて真剣に考えていた。
掌サイズの紙に書いて、四つ折りにした小さな手紙。
ちなみにこの手紙は、わたしの右隣に座るアタルに向けたものである。
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