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「凜夏って、ずっと同じボールペン使ってるよね?」
堤防で〇×ゲームの研究をしていたとき、ふいにアタルが言い出したことがあった。
「そう、これ書きやすいから。インクなくなったら同じの買ってる。中学生のころからずっと」
わたしが使っていたのはとあるメーカーの水性ボールペンだった。書き心地がいいためわたしのお気に入りであり、中学時代から高校を卒業した今日にいたるまで、文房具店で他のボールペンの購入を検討したことは一度もない。これもわたしのおもしろみのない、保守的な性格によるものだ。
しかしそんな性格を、アタルは褒めてくれた。
「凜夏って、ブレない人って感じでいいよね。同じボールペン使い続けるし、⚪︎×ゲームやり続けるし、他の人みたいに髪型とかもコロコロ変わらないし。自分を持ってるって感じがする」
そう言われたのがうれしくて、わたしはその言葉をそれから先の数ヵ月、何度も反芻しては胸を躍らせていた。そして気が付けばわたしは四六時中アタルのことばかり考えるようになっていた。つまり、そのときからわたしはアタルのことが好きに——単なる友情ではない感情を持つようになったのだった。
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