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「放課後に〇×ゲームの研究とか、おまえらどんだけ無駄な時間を過ごしてんだよー」
三好がからかうように言う。
「三好だって瑠奈と遊んでただけなんだから、じゅうぶん無駄な時間を過ごしてただろ」
アタルが言い返した。
「ああ、おかげで俺は滑り止めの大学に進学することになった」三好がなぜか胸を張る。「俺は瑠奈と遊んでばっかいたから受験に落ちた」
「他人のせいにすんなし」
瑠奈が三好の肩にバシンと手を置く。
「だから、いてぇって」三好が瑠奈の手を払う。
「でも、落ちたのも無駄じゃないよ。『叶わなかった思いこそが、その人の人生を豊かにする』んだから」
「お、瑠奈めずらしくイイコト言うじゃん」
三好が目を丸くしている。しかし、この言葉は瑠奈が考えた言葉ではない。
「それ、校長先生が言ってたやつでしょ」
わたしは言った。
『希望する進路に進めなかった人もいるかもしれません。でも、それは悪いことではない。叶わなかった思いこそが、その人の人生を豊かにするのです』
これは校長先生が卒業式で言った言葉だ。彼の長い話の中で、その一節だけがわたしの脳裏に焼き付いていた。どうやら瑠奈も同じだったらしい。
「なんだよ、校長の受け売りかよ」
感心して損した、と三好が不満げな顔をする。
「でも、そんな言葉を瑠奈が覚えてるってこと自体がすごいじゃん」
アタルが言った。
「でしょでしょ、アタル、もっと褒めろー」
瑠奈がはしゃぐ。
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