0人が本棚に入れています
本棚に追加
僕が幼稚園に通っていたある秋の日。
園庭で遊んでいたら、仲良しの女の子・さきちゃんが話しかけてきた。
手には大量のドングリ。
「ねぇ、これあげる! キレイなのあげるね」
そう言って選んだドングリを差し出してくれた。 お礼を告げて受け取り、そのまま手に持っておいた。
「ポケットにいれとけば? ほら、さきもいっぱい、はいってるよ!」
さきちゃんは自慢げに自身のポケットを見せた。 本当に詰め込まれているようで、歩く度少しずつ落ちている。
ポケットに手を入れたり物を入れることを禁じられていた僕は、戸惑ってしまった。
「ほらかしてごらん!」
さきちゃんはドングリを受け取ると、僕のポケットに突っ込んでいれた。
「ドングリ、ないしょね!」
そう言って笑顔を向けた彼女の姿が、まばたきをした一瞬で消えた。
その後、園では居なくなったさきちゃんを探して先生達が大騒ぎ。 警察の捜査も行われたが、さきちゃんが見つかることはなかった。
事情を聞いているはずの母も、優しい笑顔で迎えに来てくれて、特になにも言うことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!