ポケットの怪物

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僕が幼稚園に通っていたある秋の日。 園庭で遊んでいたら、仲良しの女の子・さきちゃんが話しかけてきた。 手には大量のドングリ。 「ねぇ、これあげる! キレイなのあげるね」 そう言って選んだドングリを差し出してくれた。 お礼を告げて受け取り、そのまま手に持っておいた。 「ポケットにいれとけば? ほら、さきもいっぱい、はいってるよ!」 さきちゃんは自慢げに自身のポケットを見せた。 本当に詰め込まれているようで、歩く度少しずつ落ちている。 ポケットに手を入れたり物を入れることを禁じられていた僕は、戸惑ってしまった。 「ほらかしてごらん!」 さきちゃんはドングリを受け取ると、僕のポケットに突っ込んでいれた。 「ドングリ、ないしょね!」 そう言って笑顔を向けた彼女の姿が、まばたきをした一瞬で消えた。 その後、園では居なくなったさきちゃんを探して先生達が大騒ぎ。 警察の捜査も行われたが、さきちゃんが見つかることはなかった。 事情を聞いているはずの母も、優しい笑顔で迎えに来てくれて、特になにも言うことはなかった。
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