ポケットの怪物

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僕はあの時の光景が忘れられなくて、未だにポケットに手を入れないよう気を付けている。 そして僕は、大学生になった。 実家から1時間ほどの距離の大学に通っている。 普通の人生を送ってこれた僕には、彼女が出来た。 彼女は大学近くのアパートに住んでいるため、次の日一限や二限がある日にはよく泊めて貰っている。 付き合い初めて1年が経とうとしているが、どうも最近は折り合いが悪い。 僕が近くに居ることが彼女の機嫌を損ねるようだ。 もう終わりなのかと思った矢先、彼女の家へ行くと、見知らぬ男とベットにいるのを見てしまった。 男は逃げるように去っていったが、彼女は逆ギレして僕に当たってきた。 「信じらんない。 来るなら事前に言ってくんない? 鍵返してよ!」 浮気をする方が悪いのに、僕を悪くいう彼女に思わずキレてしまい、鍵を投げつけた。 「痛っ。なんなの? はぁ!? もう警察呼ぶわ!」 意味が分からない展開に、僕の頭はカッとなり、気付いたら彼女を殴っていた。 何度も、何度も、何度も…… 我に返った時には、彼女はもう返事もしなかった。 血まみれの手をみて後悔する。 僕ももう、死ぬしかない……。 自身のポケットに手を入れようとして、手が震える。 激しい動悸と冷や汗。 呼吸が苦しくなり、だんだん目の前が真っ白になっていった。
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