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その大樹に「大樹、驚け、この月緒さんは、橘誠先輩の娘さんなんだぞ」
と、壮太が、教える「な、何だって?本当か?それ」
驚きを通り越した顔で、そう言った大樹は
「じゃ、先輩も、そこに居るのか?写真で良いから送ってくれ」と、言う。
写真なんかじゃ、失礼だからと、誠が電話に出て
「月緒の事、宜しくお願いします」と、言うと
「わぁ~本物の先輩だ~」大樹は、大感激で
「こちらこそ、宜しく、月緒ちゃんの、良い兄になるように努力します」
と、声を震わせて言った。
そんな喜び一杯の結納も済み、また、何時もの毎日が始まる。
学校から帰った月緒は、一郎と一緒に受験勉強に励み、そんな二人の為に
明弘や、孝子や正明は、美味しいご飯を作っては、食べさせ
誠は、仕事帰りに、色々なスイーツを買って来て、月緒を喜ばせた。
そして「帰りたく無いな~」と言いながら、誠はアメリカへ帰る。
だが、ひと月もしないうちに「お正月だから」と
日本に帰って来るだろうと、誰もが思っていた。
皆の予想通り、まだ年末だと言うのに、誠は帰って来て
「お父さん、お餅を搗きましょう」と、餅つきをせがむ。
その日、実家に居たのは、正明、明弘、誠、壮太と言う、大の男がごろごろ。
孝子は「男手が、こんなに有るんだから」と、餅つき機では無く
臼と杵で、昔風な餅搗きにしたので、誠は大喜びで、動画を撮りまくったり
餅つきに挑戦して、沢山餅を搗いたので、疲れて伸びてしまい、月緒に
「お父さん、若いつもりでも、もう歳なんだから」と、言われてしまった。
「さぁさぁ皆、自分の家に飾る、鏡餅は持ったの?」
「は~い、持ちました~」皆は、自分が搗いた餅で作った、鏡餅を持ち
孝子が作って呉れた、お節の重箱と一緒に、持って帰る。
「母さん、有難う、年始には、祥子も来るそうだから」
壮太は、そう言うと、嬉しそうに荷物を抱えて帰って行った。
「婚約したのは、明弘なのに、この頃は、しょっちゅう壮太が来るな~」
と、正明が首をひねる、誠先輩に会うんだと、やって来る壮太に
魚や野菜を持たせて、帰らせると「美味しかったです」と、祥子が
手作りのケーキを、持たせて来るようになっていた。
「良いじゃ有りませんか、誰でも来てくれれば、賑やかなんだから」
誠や月緒がクッションになって、自分達と、壮太と祥子との間も
うまく行きそうだし、正月には、久し振りに孫の顔も見れそうだと
孝子は、嬉しかった。
その日は、12月30日だった。
「いよいよ明日は、大晦日だね、それが終わったら、月緒は、あの振袖を着て
初詣なんだろ?一杯写真を撮ろうと、新しいカメラを買ったんだ」
誠は、嬉しそうに、新品のカメラをさすりながら言う。
小さい頃の写真を撮れなかった所為か
誠は、一枚でも多く、月緒の写真を撮ろうとしていた。
「お父さん、これからも、写真は一杯撮れるわよ」と、月緒が言うと
「そうそう、結婚式とか」と、明弘が言う。
「あ、その結婚式だけどね、大学に合格したら、直ぐに挙げたいね」
「ええっ、嘘でしょ、お父さん、酔ってるの?」月緒が驚いて言う。
「いや本気だよ、ね、お母さん」誠は、孝子に同意を求めた。
「私達は、どちらでも、ね、お父さん」孝子は、正明に同意を求める。
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