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授業が終わり、帰宅しながら、月緒は一郎にメールをした。
「一度、家に帰って出なおすわ、どこに行けば良い?」
「じゃ、欅通りの外れに有る、亀の子公園で会おうよ」
「良いわ、じゃ、その公園で待ってるね」
月緒は、家に帰って、着替えると、車に乗って亀の子公園まで行った。
公園のベンチに座って、待っていると
「ごめん、待った?」と、両手に、桃のスムジーを持った一郎が駆けて来た。
「ううん、ついさっき来た所」「良かった、これ飲む?」
「うん、有難う」と、スムージーを受け取った月緒の横に、腰かけた一郎は
「忙しいのに、悪いな」と言う。
「全然、私、家では何もしないから、夕食までは暇なの」
「そうか」一郎は、安心したような顔で、スムージーを飲みながら
「うちは、江戸時代から続く、医者の家でね」と、自分の事を話し始めた。
「医者って、、市役所の前に有る、あの、大きな相馬病院?」
「うん、父が院長で、母が副院長をしてる」「そうなんだ」
「僕には、姉が二人居るけど、二人とも医者で、両親も祖父母も
叔父叔母に至るまで、全員医者なんだ」「わぁ~凄いね~」
「だから、当然、小さい時から、僕も医者になるものだと思っていたんだ。
だけど、中学に入った頃から、僕は、医者には向いていないんじゃないかって
悩む様になったんだ、理科で蛙の解剖なんか見たら、気分悪くなるし
天才的な頭脳を持っている、姉二人は、先生の話さえ、聞いていれば
テストで、100点を取るのは、当然だって言うけど
僕は、必死で勉強しないと、100点は取れなかった。
高校入試も、医大を目指すなら、神宮町の神宮高校に、行く方が良いんだけど
受かる自信が無くて、家から近いからと言う理由を付けて
三条高校へ入ったんだ。
格下の三条高校だから、学年一位と言う成績は、当然だと言われていたから
僕は、それだけを必死で守って来たけど、神宮高校から転校して来た
君に、あっという間に一位の座を、奪われてしまった」
一郎は、一気に、そこまで話し終えた。
「そうだったの、でも私が一番だったのは、たまたまで
二学期は、君が一位になるかもよ」月緒は、そう言ったが
一郎は、悲しげに首を振り
「分かるんだ、やっぱり神宮高校に行けなかった僕だから、、」と、言う。
さらに「僕は、勉強以外、何も出来ない、その勉強でも、追い抜かれちゃって
何も無くなった、もう、死んだ方が良いかなって、思っちゃったんだ」
「そんな事で、、」「そうなんだ、君と違って、こんなつまらない事で
死のうとしたんだ」一郎は、自虐的な顔でそう言った。
その時、そんな二人を目にして、驚いている明弘がいた。
明弘は、総務課長の飯塚に
「秋の物産展の事で、商工会の会長に会いに行くんだ、お前も来てくれ」
と、頼まれた「何で、会計課の俺が、、」と、渋る明弘に
「会長は、お前を連れて行くと、機嫌が良いからな~
何事も、スムーズに運びたいからさ」と、重ねて頼まれ
「仕方ない、、」と、一緒に、車で、商工会議所まで行く途中だった。
明弘が見ている方を見た、飯塚は
「あれは、相馬病院の坊ちゃんじゃ無いか」と、言い
「一緒に居るのは、彼女ですかね、可愛いですね~」と、運転手も言う。
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