73人が本棚に入れています
本棚に追加
壮太は、母の孝子から、土曜日の結納に出席してくれと言われ
「いつもの事だけど、いきなりだな~こっちにだって、都合が有るんだよ。
その日は、祥子のお祖母さんの、卒寿のお祝いに呼ばれてるんだ」と、言った
「じゃ、祥子さんは、そっちに行って、お前だけ来れば?結婚式なら
二人で来て欲しいけど、結納だからね~」と、孝子は、のんびりした声で言う
壮太は、母との電話を切り、直ぐに明弘に電話を掛ける。
恋人がいると言う話も聞いていないのに、何でもう、婚約なんだ。
相手は、一体誰なんだ?聞きたい事は、山ほど有った。
「いや、俺も、こんな事になるとは、思って無かったんだが、、、
どんどん話しが進んでな~」照れくさいのか、明弘も、のんびりした声で言う
「相手は?何歳なんだ?」祥子より、若いのか、年寄りなのかも気になる。
「ああ、18歳なんだ」「18歳?」「うん、まだ高校の三年生なんだよ」
「高校生だって?正気か?」明弘との歳の差は、親子ほども違う。
「父さんと母さん、良く許してくれたな」あの、世間の事には五月蠅い両親が
「ああ、二人とも、大賛成してくれて」「大賛成?」信じられなかった。
「どこの子だよ」「お前も、よく知っている人の娘さんなんだ、会えばきっと
驚くよ」そう言われたが、そんな心当たりは、全然無かった。
その土曜日になり、壮太は、祥子と子供を車に乗せて、祖母の家に行ったが
途中の花屋で、大きな花束を作って貰い、それを祖母に渡し
折角のお祝いなのに、実家に用が出来てと、断り
祥子と子供だけを置いて、実家へ急いだ。
そこで、父親と笑い合いながら、釣り道具の手入れをしている誠を見て
目を丸くする「せ、先輩、何でこんな所に、、」
アメリカへ居る筈の、スーパーヒーロー、橘誠が、なぜ実家に居るんだ?
軽いパニックになっていると「やぁ、壮太君だね、うちの娘が、君の妹になるんだ、宜しくな」と、誠が言う。
「ええっ、妹って、、じゃ、兄と結婚するのは、、」「そう、私の娘なんだ」
そう言う、爽やかな笑顔の誠は、兄の明弘より若く感じた。
本当に、この人の娘がと、信じられない事に、首を振っている所へ
「お父さんたち、用意は出来たの?」と、健康そのものと言う感じの
林檎の様なほっぺをした、可愛い女の子が顔を見せ
「あ、初めまして、私、月緒と言います、壮太さんですよね」と、言った。
「そ、壮太です」この子が、そうなのか?そうに違いないと、何故か思う。
「おかあさ~ん、壮太さん、来てくれましたよ」
と、いきなり月緒が、奥の部屋に向かって言う。
そのお母さ~んは、使い慣れた、何の違和感も無い言葉だった。
もう、この家に、しっかりと馴染んでいる、そんな感じがした。
その事は、もっと信じられなかった。
「良い所に来てくれたわ、壮太、この荷物を車に積んで頂戴」
孝子は、早速壮太に、仕事を頼む。
こうして、煌びやかな、結納の品々は、月緒の部屋に運び込まれ
並べられたのだった。
やがて、楽しい会席が始まった。
「この壮太の下に、大樹と言う三男が居まして、今は、ミラノで
日本料理の店に、勤めています」と、明弘が、スマホの画面を見せながら言う
「そうですか、今度ミラノに行ったら、寄って見ます」と、誠が言う。
その言葉が終わらないうちに、大樹から御目出とうの賑やか通話が入る。
その大樹に「これが、月緒だ」と、振り袖姿の月緒の姿を、写真で送ると
たちまち、スマホは静かになった。
「お~い、どうした?」と、明弘が言うと
「こんな綺麗な子を、、兄貴には勿体ない」と、ぶうたれた顔の大樹が言う。
それを見て、孝子を始め、誠も壮太も、大笑いしてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!