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二日後の昼休み、月緒は、校庭の隅のベンチに
ぼんやり腰掛けている、一郎を見つけた。
相変わらず、暗い顔をしている。
思わず月緒は「何をしてるの?」と、声を掛けてしまった。
驚いた顔を上げた一郎は「何だ、小野田か」と、冷静な顔に戻り
「何もしていないよ、考え事をしていただけだ」と、言った。
「どうせまた、死ぬ事でも考えているんでしょ」月緒の思いがけない言葉に
一郎は、ぎょっとした顔になって「何で分かる?」と、聞く。
「やっぱりね~~私が、死のうと思っていた時と、同じだもん」
「えっ、お前も?何でだ?何も死ぬような事は、無さそうなのに」
一郎は、意外だと言う顔になって聞く。
「私が、どんな事を思っているかなんて
ちょっと見ただけじゃ、分らないでしょ」
「だって、成績は、学年のトップだし、、」あの川では
伸び伸びと、楽しそうだった、死の影など、どこにも無かった。
「私ね、、、」月緒は、母が死んだ事を話し
本当に、母は、もう帰って来ないと実感した時、恐ろしい程の孤独を感じ
死んで、母の元へ行こうと思った事を、話した。
「そんな辛い事が、、、」一郎は、その話に驚き
「俺の悩みは、小野田に比べると小さいな~」と、ぼそっと言った。
「どんな悩み?私で良かったら、話しを聞くわよ」
「本当か?聞いて呉れるか?」「ええ、良いわよ」
「じゃ、電話番号、交換してくれる?」「良いわよ」月緒が、そう言った時
「うわ~小野田と相馬が、校内デートしてる~~」と、遠くから
はやし立てる、月緒のクラスの、男子たちが居た。
一郎は、大慌てで立ち上がると「じゃ、後で、、」と、こっそり
電話番号を書いたメモを渡し「うん、後でね」月緒も立ち上がり
二人は、右と左に分かれて、それぞれの、教室に帰る。
「小野田~相馬と、どんな話をしてたんだよ」
後から、さっきの男子たちが戻って来て聞く。
「別に、数学の分からない所を聞いていただけよ」
「ふ~ん」「本当かな~~」と、男子たちは、信じない。
「本当よっ、他にする話なんて無いわ」と、月緒は怒った顔で言う。
「それなら良いんだよ」「そうそう、小野田は、俺達の小野田だからな~」
「隣の、相馬なんかに、盗られたく無いんだよ」
男子たちは、意外にも、本気モードの顔で、そう言う。
「心配しなくても、私が、相馬君に盗られる事なんて、絶対に無いから」
そう言う月緒の、正直な顔を見て、男子たちは、安心して、自分の席に座る。
『俺達の、小野田だって、、』月緒は、男子たちの気持ちが、嬉しかった。
そして思う『私の心は、もう、とっくに、明さんに盗られているのよ』と。
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