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小学生の冬の日。
大雪が降り、雪が積もった昼過ぎ。
私は一人でせっせと雪だるま作り。
一人だから、手のひらで丸を作れるくらいの小さいのだけど。
「つめたーい!」
冷える手を息で温めながら完成に近づいていく。 最後に雪だるまをポンポンと叩いて完成させると同時に、眩い光が辺りを包んだ。
光が落ち着き目を開けると……
「俺様誕生!!!!」
雪だるまが、動いて喋りだした。
「おい嬢ちゃん、お前は何もんだ?」
「私はゆい……あなたは?」
「俺様はまだ生まれたばっかだから名前がないんだ。 よければ嬢ちゃんが名付けてくれよ☆」
「じゃあ雪だるまで…」
「おおい冷めてるなぁ!? 氷点下か!?」
「雪だるまが動くの、映画だけで十分なので…」
はぁ、とため息をついて見せる。
雪だるまはピョンピョン飛んで、まるで抗議しているみたいだ。
「雪だるまが動くなんてぇ〜☆ を期待してたのに! こんなこと普通ないんだぜ!?」
「あ…別に。どうぞご自由に…」
「もういいけどさっ。そうだ、嬢ちゃん、冷凍庫ってやつ貸してくれよ! 俺様そこに住みたい!」
図々しいお願いを、目を輝かせて本気で言ってくる。
「家の冷凍庫、冷凍品でいっぱいだから無理。ママに殴られるし。」
「キーッ!!!」
雪だるまのくせに、何故か冷静でいられない子なんだな…。
「じゃあ溶けるまで一緒に遊んであげる」
雪だるまは動きを止めて、仕方ないという風に鼻で笑った。
そして、私達は沢山遊んだ。
雪が溶けるまで、何日も。
「…よぉ、ゆい。俺様はもう動けねぇ」
「…うん」
「今からでも冷凍こ」
「入らないの。」
カッカッと笑う雪だるま。
「遊んでくれてありがとな。また来年、雪が降ったら来るからな。」
「…うん。またね」
「ああ、またな。」
その会話を最後に、雪だるまは形が崩れて動かなくなった。
また来年、雪だるまに会える。
そうして毎年、冬が楽しみになった。
君に記憶は引き継がれないけど、私はいつだって一時の冬を心待ちにしているよ。
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