奪われたもの

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すると、車内アナウンスが流れる。 「次はエブリスタゲートウェイ。右側のドアが開きます」 「私はここで降りるんです」 突然、ポケットから彼女の手が抜かれた。俺の手は虚しさを感じていた。 電車は徐々に減速し始める。スーッ、ピタっ。電車がホームに到着する。彼女は席を立ちドアに向かう。後ろ姿を見ていると、彼女はこちらを振り返って言った。 「じゃあ、また明日」 ドアが開き、彼女は満面の笑顔で電車を降りて行った。 また明日だとーっ、何と言うことだ。こんな運命的な出会いに恵まれるなんて。今日という日は最高の日だ。しかも、また明日か、俺はすっかり盗まれてしまった。俺の心を…。やり手のスリだな。
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