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ちょうどいい。中がどうなっているか、気になっていたんだ。動物と違って、美羽なら教えてくれるだろう。
そろそろいいかな。
ポケットに手を入れ、美羽が出てくるイメージを持つ。
パッと目の前に美羽が現れた。
一目で怒っているとわかる。中はどうだったかと聞けるような雰囲気じゃない。
「これ、どういうこと?」
美羽は手に紙屑のような物を握りしめていた。よく見ると、髪の毛にも糸くずのような埃がついている。
うわっ、ポケットの隅ってゴミが溜まるって聞くけど、触ったことがないから、気にしてなかった。もしかして、俺のポケットが汚すぎて、怒ってるのか。
「ごめん」
先手必勝! とりあえず、あたまを下げた。
「何で謝ってるの? 私が怒っているわけ、わかってるの?」
わかってない。けど、そう言ったら、余計に怒られそうだ。俺は沈黙を選んだ。
「何でもポケットに入れるから悪いのよ」
美羽が握りしめていた紙屑を丁寧に広げる。それはレシートだった。
「ホテルに誰と行ったの? ダブルの部屋」
いいホテルだった。夜景が綺麗で恋人たちに大人気というホテルだ。どう言い訳すれば、浮気じゃないと思ってもらえるんだろう。
美羽がレシートの下の部分をつつく。
困ったことにレシートの内訳にはナンパ成功に浮かれた俺がルームサービスで頼んだシャンパンもあった。
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