1.尚哉の浮気疑惑

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1.尚哉の浮気疑惑

夏姫(なつき)、私と結婚してほしい」 震える私の耳に届いたその言葉は、ひび割れた私の心に染み入っていく。  私の名前は白石夏姫(しらいしなつき)。  叔父が社長を務める白石建設の資料室で働いているOLだ。  資料室と言っても、ただの保管部ではなく営業推進部などの担当の下について、必要な情報を集めて資料をまとめ上げる、パートナー的存在だ。  資料に関しては社内でも右に出るものはいないと言われるほど優秀な部署人材が集まる部署(らしい)で、営業推進部だけに配属することに反対だという意見が多数あり、その都度必要な部署へと出向する形を取っている。  ちなみに、資料保管係というのはまた別にあって、そこは純粋に資料の保管や管理をしている。  白石商事の系列会社の白石建設に勤めているが、その白石商事の社長が私の親で、正真正銘の社長令嬢。  でも、普通の一般家庭と同じように育てられたから、贅沢もしてないし、一般常識もきちんとある。  社長令嬢だからといって高飛車なことはしていないし、どこにでもいる普通のOLだ。  けど、社長令嬢だと知られると「コネ入社だ!」とか言われるから(ちゃんと試験を受けて合格したのに)母方の姓の日向(ひなた)を名乗り試験を受け、無事に合格。              人事の清田部長が叔父の腹心で、名前の件も理解してくれて、父からも他の入社希望者と同じ対応で公平に判断するように言われていたみたい。だから、間違いなく実力入社だ。(多分……)  そして研修期間を終えてから資料室に正式配属。外国語がネイティブレベルだということと的確な資料作成がどうやら好評らしい。  調べることが大好きな私としては、これがなかなかに忙しく毎日が充実している。  
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